2021年1月21日、米大統領に就任したばかりのジョー・バイデン氏が、アフガニスタンでタリバンの米国人殺害に報奨金を払っていたロシアに報復した——仮にそんなことがあれば、大きな注目を集めるだろう。バイデン大統領は、この報奨金支給にかかわったロシアの諜報員を殺害するよう米中央情報局(CIA)に指示を出し、ウクライナにはロシア軍の侵攻を防ぐため殺傷能力の高い軍事支援を提供し、同盟諸国と協力してベネズエラからロシアとキューバの勢力を追い出そうとするだろう。また、ロシア側が違反を続ける軍縮合意から手を引き、ロシア産天然ガスをドイツに運ぶパイプライン「ノルドストリーム2」に関する制裁措置を強化する。バイデン氏はもちろん、こうした措置を何一つ実行しないだろう。ロシアがアフガンの米兵殺害に報奨金を出していたという説と、それに関するドナルド・トランプ大統領の対応をめぐる最近のワシントンでの大騒ぎと兼ね合わせて、このことを考えてみる必要がある。匿名の情報源がリークしたこの話は、ワシントンでの情報機関とメディアと政治の不透明なつながりの深淵(しんえん)を再びのぞかせるものだった。