シンガポールによる代替は困難
人民元取引で圧倒的強み

 すでに3月26日に発表されたZ/Yenグループの国際金融センターランキングでは、長引く抗議デモにより香港は6位と調査開始以来の最も低い順位となっていた(図表1)。

 国家安全維持法施行前日の6月29日、米国が、香港に認めてきたビザ発給や関税などの優遇措置の廃止を発表するなど、状況がより厳しくなったことで地位低下がさらに進む懸念が高まっている。

 実際、今回の動きを受けて富裕層やヘッジファンドなどの投資家がシンガポールへ退避しているとの報道は多い。

 香港とシンガポールは世界各国からの貿易の中継地、さらには自由な金融市場としての特徴も持つことで、さまざまな通貨での資金決済機能の強みを積み上げてきた。

 個人所得税の最高実効税率は香港15%、シンガポール22%、法人税はそれぞれ16.5%、17%と、ほかの先進国やアジア諸国・地域に比べかなり低い(図表2)。

 シンガポールは香港と同様に「低い税率」という大きなメリットを持ち、資金シフトを計画した場合の有力候補地となっている。

 また、金融仲介業者にとっても、為替取引の利便性という点でシンガポールを拠点とするメリットもある。

 カレンシーボード制(ドルペッグ制)の香港ドルと同様に、シンガポールドルはバスケット方式による管理型変動相場制という仕組みの下、米ドルと比較的安定した為替取引ができるという魅力がある。

 ただし、こうした状況下でも、中国本土では厳しい資本規制があるため、中国関連取引を主とする金融機関は簡単に香港の機能を手放すことはできないだろう。