自動車 “最強産業”の死闘Photo:picturedesk.com/JIJI

イーロン・マスク率いる米国の電気自動車大手・テスラの日本法人で、一部社員による「自爆営業」が横行していたことがダイヤモンド編集部の取材で分かった。2025年の販売台数は1万台を超え、過去最高を記録するという絶好調の裏で、いったい何が起きていたのか。長期連載『自動車 “最強産業”の死闘』の本稿では、日本法人の橋本理智社長を含む幹部が、報酬を一部辞退することになったテスラ日本法人の内情を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)

中国勢台頭、イーロン・マスクの発言で世界販売は低迷
その中で、日本法人は過去最高の販売実績を上げたが…

 米国の電気自動車(EV)大手・テスラの日本法人で、社員自らがEVを予約するための契約金のようなものを支払う「自爆営業」を行っていたことがダイヤモンド編集部の取材で分かった。

 テスラ日本法人には、消費者がEVを実際に購入するかどうかにかかわらず、注文を確定させるために1万5000円の「注文料」をクレジットカードで支払ってもらう独特の仕組みがある。消費者は、注文料の支払い後、実際に購入するか、あるいは注文をキャンセルするかを選択できる。ただし、注文をキャンセルした場合、注文料は返ってこない。

 詳細は次ページで解説するが、テスラ日本法人の一部社員は、自身のクレジットカードで、実際の顧客や、架空の顧客の注文料を支払っていた。社員自らが注文料を支払うことから、「自爆営業」の一種と考えられるが、社内では「自爆オーダー」とも呼ばれていたようだ。

 2025年のテスラの世界販売台数は、前年比8.6%減の163万6129台。同期間で約226万台を販売した中国のBYDに、EV世界首位の座を奪われた。

 テスラが首位の座から陥落した理由には、BYDをはじめ中国勢の躍進に加え、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が米国のトランプ政権の幹部として、政治的発言を繰り返したことにより顧客離れを招いたことがある。

 世界では不振にあえぐテスラだが、日本では様相が異なる。テスラは日本での販売台数を明らかにしていないものの、25年の販売台数は約1万0600台だったとみられる。21~24年は、5000台前後だったので、25年の販売台数は約2倍に急増したことになる。

 テスラ日本法人は従来、オンライン中心で販売してきたが、25年はショッピングモール内に直営店舗を出店するなどリアル販売を強化した。店舗の重視と並行して、販売人員の採用を強化していた。こうした一連の施策によって、販売台数を増やしていた。

 しかし、この絶好調の裏で、一部社員による自爆営業が行われていた。経営陣は事態を重く受け止め、日本法人の橋本理智社長を含む幹部が、報酬を一部辞退したという。

 いったいなぜこのようなことが起きてしまったのか。次ページで、テスラの自爆営業の実態と、不適切行為が起きた原因を明らかにする。