――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
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クルーズ業界はもう終わりだと思っていた門外漢にはピンとこない話だ。
クルーズ船運航会社はこの数十年の間にそれなりの困難を乗り越えてきた。しかし新型コロナウイルスが世界的に流行する中、予約のキャンセルや規制強化、訴訟、除染コストに圧迫されて運航会社の存続そのものが脅威にさらされているとの見方もある。だが運航会社にとって幸いなことに、筋金入りの愛好家はまた船に乗り込むのが待ちきれないようだ。主要運航会社のカーニバル、ロイヤル・カリビアン・クルージズ、ノルウェージャン・クルーズラインの株価は大幅に下がっているが、ゆくゆくはこうした愛好家の支持が株価を立ち直らせてくれるはずだ。各社が資金的に持ちこたえられれば、の話だが。
クルーズライン国際協会(CLIA)の調査によると、この10年、クルーズ旅客数は毎年一貫して伸び続けている。過去5年の累計の伸び率は30%に上る。過去には大きな事故などが起きているにもかかわらずだ。2012年にはコスタ・コンコルディア号が座礁し、32人が死亡する事故が起きた。翌13年には別のクルーズ船のエンジンルームで火災が発生し、その後下水が漏れ出したこともあった。船内での集団疾患も頻繁に起きている。
2020年に旅客数の伸びが止まるのは確実だが、クルーズ愛好家は小説「白鯨」の船乗りイシュメールのようなもので、いくら海にひどい目に遭わせられても海に引き寄せられる。アナリストの推計では乗客の約30%はリピーターだ。カーニバルによると同社の乗客の過半数が常連で、多くが少なくとも年に一度はクルーズ旅行を楽しんでいる。中には年に2回以上、参加する人もいるという。カジノの常連客にとってもそうだが特典制度は大きな魅力で、ピンバッジから船長とのプライベートディナーまでさまざまな特典制度が用意されている。