過去のリセッション(景気後退)時には米国の高等教育制度が失業した労働者を吸収することで、ある種のバッファー(緩衝装置)として機能した。しかし一部のエコノミストによると、新型コロナウイルスの流行が引き起こした今回のリセッションでは、その特性ゆえに大学はこれまでのような役割を果たしにくいという。
例えば、どのくらいの大学が授業を再開するか、どの程度の規模で再開するか、どれくらいの人数が大学で学ぶ道を選ぶのか、はっきりしない。解雇された多くの労働者はオンライン講座を受講するための高速インターネットが利用できないかもしれない。高い失業率がどれくらい続くのかや、学生はコロナ後の労働市場で必要な技術を習得できるのかも定かではない。
リセッション時に失業すると、労働者は賃金喪失やキャリアの遅れによってその後何年も、影響を受けることが研究によって分かっている。大学や大学院に入学すれば習得した新しい技術で稼ぐ力が向上し、失業によるダメージを緩和・克服できる。労働者の教育水準の向上は生産性や潜在成長率の拡大につながるため、経済にとってもプラスだ。
ブルッキングス研究所のシニアフェローでオバマ政権時代に財務省で勤務したアダム・ルーニー氏は「仕事がほとんどなく、景気が良くないときは大学に戻って学位を取得する絶好の機会だ」と話す。
学術誌「ジャーナル・オブ・エコノメトリックス」に2005年に掲載された論文によると、失職者がコミュニティーカレッジで1年学ぶと、長期的な収入が男性で平均約9%、女性で13%増加した。論文では一つの会社や業界で長期間働いたあと1990年代初頭に解雇され、その後再就職した労働者を分析した。