誰もが一度は経験したことがあるだろう落し物――傘ぐらいで済めばまだ良いほうだが、財布や携帯電話などを失くしてしまっては一大事だ。精神的なショックに加えて、警察への届け出やカード類の利用停止手続きなど、二次被害の防止にも奔走しなければならない。だからといって、必ず手元に返ってくるという保証もない。

 現在では、ソーシャルメディアを利用して落し主が情報を募るケースもよく目にするようになった。こうした動きをさらに一歩進めて、落し物情報に特化したプラットフォームを提供しているサービスがある。それが「落し物ドットコム」である。

「落し物ドットコム」トップページ。現在はスマートフォンサイトのみ公開。2012年中には、落とし物をした際の対処法等を網羅した「落し物図鑑」や、スマートフォン紛失時のセキュリティ保護機能を搭載したAndroid端末向けアプリをリリース予定。

「落し物ドットコム」では、Twitterアカウントを用いて拾得物、遺失物の投稿ができる。投稿した情報はTwitterで拡散されることで、より多くの人の目に触れる仕組みだ。登録情報は誰もが閲覧可能で、地域や落し物の種類などで検索をかけることができるようになっている。また、落し物を拾ってくれた人や協力してくれた人に、ありがとうの伝言を残す機能も搭載されている。

「落し物を持ち主に届けてあげるという行為は、日本人が昔から大切にしてきた文化です。その文化をソーシャルの力を活用して可視化、支援してあげられる機能を持っている点が最大の特徴だと考えています」(株式会社落し物ドットコム 増木大己 代表取締役社長)

 落し物を拾った側にとっても、警察への届け出に加えて「落し物ドットコム」を併用すれば善意がより実りやすいというメリットがある。自分が拾った落し物の状況をリアルタイムに知ることができるのみならず、落し主から感謝のメッセージが届く可能性もある。自分の善意が可視化され、感謝されるかもしれないという体験は、従来の落し物に対する意識をよりいっそう高める効果がありそうだ。

  “落し物総合カンパニー”を目指す同社では、今後「落し物にまつわる様々なニーズに応えるサービスを展開する予定」(同氏)だという。「落し物ドットコム」での当面のマネタイズは視野に入れておらず、例えば、法人向けサービスとしてスタートさせる「落し物ドットコム リターンタグ」などで収益化を目指す。こちらは、社員の個人情報に紐付けしたシールタグを配布することで、万一、落し物をした際に、迅速、かつ確実に落し主への連絡・回収が可能となるサービスだ。

「また、落し物を管理する施設向けのサービスも考えています。各施設で取り置き期限の切れた遺失物の処分を請け負ったり、大規模イベント時の遺失物対応といったサービスも検討中です。会社の成長に合わせて、落し物というフィールドに特化したビジネスモデルを提供していきたいと考えています」(同氏)

 さらに、日本特有の落し物文化は、海外でのビジネスチャンスを切り開く可能性もあるという。

「海外では日本の警察のような、遺失物を持ち主に戻す仕組みが機能していないという現状があります。日本のように持ち主に返ってくる可能性は低いかもしれません。ですが、落し物先進国の日本からサービスを拡大していくことで、世界中の落し物が持ち主の手に無事に戻るように支援していきたい」(同氏)

 とかく世知辛い世の中にあって、日本人ならではの倫理観を改めて実感させてくれるこのサービス。落し物に気づいた際は、ぜひアクセスしてみてはいかがだろう。

(中島 駆/5時から作家塾(R)