そう言うと谷口医師は、典型的な症例を1つ、紹介してくれた。

【薬を全く処方してもらえないで困っていた、軽症のNSAIDs不耐症、過敏症の女性】
※NSAIDs不耐症、過敏症:解熱鎮痛薬全般に対する過敏症状を指す。過敏症状には、ぜんそく型(気道型)とじんましん型(皮膚型)の2つがある。
 A子さん(30代女性)は、20代まで生理痛や頭痛時にバファリンを頻回使用していたが、副作用はなかった。特に生理のときは下腹部の痛みが強く、寝込むほどだったので、バファリンは必需品だった。
 しかし30代になったある日、生理の際、いつものようにバファリンを内服したところ、のどが絞まる感じ、呼吸困難、咳、顔面の腫れが生じた。(仕事で睡眠不足が続いていたから、いつになく体調が悪いのかも)と思った。しかしその後も、バファリンを内服するたび同様の症状が出るようになる。
 薬のせいであることを疑ったA子さんは、バファリンをやめてイブやノーシンなど他の解熱鎮痛薬を試してみた。だが、どの薬でも同様に苦しくなる。飲める薬がなくなってしまったA子さんは、医療施設を複数受診し、なんとかしてほしいと頼んだが、「いい薬はない、痛い時も我慢するしかない」と言われ続けていた。
 さらに、感染症の際の抗生剤や一般的な薬も「安全に出せる薬はない、どこの病院に行っても処方できないだろう」と言われてしまい、途方に暮れた状態で、主治医から谷口医師の外来を紹介され、受診した。
 ちなみに普段は全く無症状でNSAIDs使用時のみ症状が出る。

◎谷口医師の診断と対応
 A子さんは、典型的な軽症NSAIDs不耐症でした。彼女を診察して来た先生方は皆さん、「出せる薬はない」と断言していましたが、実は出せる薬はあるんです。
 ガイドラインにも載っていますが、セレコックスとアセトアミノフェンは使用可能(*)です。なので「その2種ならNSAIDsとして使用可能です。またNSAIDs不耐症の方は、NSAIDs以外のアレルギーは通常はないため、ほかの薬剤は安心して使用できますよ」と説明し、とても安心していただけました。
 このようなケースは非常に多いので、患者さんだけでなく医師の間でも、NSAIDs不耐症の正しい対応が全く普及していないことを強く感じます。

*添付文書では、アスピリン喘息には使用禁忌と記載されている。この記載は、日本独自の記載であり、海外にはない。その根拠はなく、アスピリン喘息の患者は安心して使用できる。

診断の決め手は
鼻の奥から生えるキノコ

 A子さんは、薬を全く処方されなくなってしまったケースだが、逆に、投与してはならない薬を処方され、ショック死する事故も起きている。原因はアスピリン喘息を疑うべき患者なのに、問診が不十分で、発作歴を聞き出すことが出来なかったためとされている。

 アスピリン喘息の診断法は問診と負荷試験しかなく、50年以上も進化していないという。