気管支喘息は、実は命に関わる疾患だ。医師である筆者は長年診療する中で、台風シーズンに患者が増える現象が気になっていた。重症化する時期を検証するとともに、その理由を探った。(医師 加藤開一郎)
17年に1794人も命を落とした
台風が来ると、患者が増える
気管支喘息(以下、喘息)はありふれた疾患ではあるが、実は命に関わる重要な疾患の一つだ。2017年には全国で1794人が喘息により命を落としている。医師として長年診療する中で、この喘息について気になっていた現象がある。台風が来ると、患者さんが増えるのだ。
医学の教科書には、喘息が季節の変わり目に悪化すると書かれているが、それ以上の詳しい記載はない。臨床現場には、教科書や論文には書かれていない不思議や疑問がたくさんあり、これを「クリニカルクエッション」と言う。
喘息のクリニカルクエッションを解くために、医療情報サービスを手掛けるメディカル・データ・ビジョンに蓄積された医療データで、喘息の重症化時期について検証した。
2016~18年までの3年間、全国285病院の1420万人の匿名化医療データを調査対象とした。その結果、3年間における喘息重積発作(症状が24 時間以上持続し、薬物治療に反応しない重篤な喘息発作)の総入院患者数は2万1555人。その入院患者数を月別に集計すると、いずれの年も9~10月に入院数が急増していることが分かった。この知見は、統計学的検証でも有意だった。