エドワード・ジュング(Edward Jung)
エドワード・ジュング(Edward Jung)
インテレクチュアル・ベンチャーズCTO。1990年から10年間、マイクロソフトのチーフソフトウエア・アーキテクトとして、ウェブプラットフォームなど次世代ソフトウエアに関連するプロジェクトを運営、WindowsNTなどのプロジェクトを起こした。タンパク質構造および機能など、生物学に関連する論文は高い評価を得ている。

――インテレクチュアル・ベンチャーズ(IV)を設立した意図は。

 IVで特許を購入して5年になる。これまでに約3万5000件を分析した。対象はフォーチュン500の大企業のものも、大学などの研究者のものもある。実際に購入したのは、そのうちの数パーセントにすぎない。大多数が、質が悪く価値がなかった。

 むろん、競争力を持ち得たすばらしい特許はある。まさに玉石混交である。それはなぜか。効率のよい市場が存在しないからだ。あればおのずと淘汰が起き、よいものだけが流通するようになる。だからこそ、われわれがそうした市場を創設しようと考えた。

 一方、製品が必要とする特許の数は、急激に増加している。たとえば、電球はわずか2つでいいが、PDA(携帯情報端末)は万単位で必要だ。いざ企業が新しい分野に参入しようとしても、われわれのように数多くの特許をまとめて提供できるところはなかった。これは数年前には存在しなかった、新しいビジネスのかたちだ。

 私はマイクロソフトでソフトウエアの開発に従事してきたが、ソフトウエアはハードウエアとは違い、価値のないものと長く思われてきた。しかし、多くの構成単位がまとまって価値が増大し、それが広く認知された。特許もまったく同じだ。10%速度の速いハードディスクドライブの技術が特許となっても、ライセンスを望む者はいない。だが、付加価値を上げる追加の100の特許を持っていれば、その特許のブロックを誰でも欲しがる。

――特許のアグリゲーター(収集する者)と呼ばれている。

 その表現は適切ではない。トヨタ自動車は、部品のアグリゲーターとは違う。部品をランダムに集めるのではなく、目的を持って部品を組み立てる。そこに価値が生まれるのだ。アセンブラー(組み立てる者)というべきだろう。