「そうだ!俺がもらっちゃおう。もしかしたらネットオークションで売れるかも!どうせ捨てるんだから、もらったって文句は言われないだろう」

 その日の退社時、AはB総務課長が離席している間に倉庫の鍵を持ち出し、うちわが入った段ボール箱を愛車に乗せ自宅に持ち帰った。そして早速、いつも利用しているネットオークションで試しにうちわを10本出品してみた。すると値段はみるみるうちに上がり合計1万円で競り落とされた。この様子にAは興奮した。

 「うちわ1本1000円で出品したとして500本で50万円。やったぜ!これで車のローンが払えるぞ!」

うちわがネット販売されている!
第一発見者は社長

 次の日、B総務課長はD社長に、うちわを他の倉庫内ゴミと一緒に処分してもいいかと尋ねた。D社長はいったん同意したが撤回し、「これから乙社長に会うのでプレゼントにうちわを50本くらい持っていこう。早速出してきてくれないか?」と頼んだ。

 B総務課長は早速倉庫へ行き、例の段ボール箱を探したが、どこにも見当たらない。

「確かにこの棚にあったはずだが…」

 倉庫内の他の場所も探したがやはりなかった。B総務課長から報告を受けたD社長は首をかしげた。

「おかしいな。倉庫には君以外は誰も出入りできないはずだ」

 B総務課長も不思議そうに言った。

「鍵は私しか持ってませんし、倉庫の中が荒らされた形跡はありませんでした。ほんとに変ですね」

 翌日の始業時間前、通勤してきたばかりのB課長の元へ、D社長が血相を変えて現れた。

「これを見てくれ!例のうちわが大量に売られている。どういうことだ?」

 差し出されたスマホ画面を見たB総務課長は驚いた。聞けば、趣味の道具を物色するため今しがたオークションサイトを訪れた際、偶然見つけたのだという。D社長が興奮状態で話すので、それを聞きつけたまわりの社員たちはざわめき始めた。

 「このうちわは当社の特注品で、結局利用せず倉庫に保管しておいたものだから、外部に出回ることは考えられない。もしかすると誰かが盗んで出品したんじゃないか?とりあえず大ごとになる前に回収しよう」