無断欠勤を繰り返すトンデモ社員が、入社数ヵ月後、社長に給料の前借りを要求するように。さらにトンデモ社員による資材の横流し疑惑の情報まで浮上する。社長は悩んだ挙句、解雇通告すると、トンデモ社員は翌日うつ病の診断書を提出、弁護士を立てて会社に金銭要求しようとする動きを見せたが……。(特定社会保険労務士 石川弘子)
創業45年の電気設備工事の会社。従業員数は10名程度で、現社長は2代目。親の代からの取引先に恵まれたこともあって、業績は順調だが、人手が足りないために、社員の残業や休日出勤などが増えている。この状況を打開しようと、社長は対策に頭を悩ませている。
登場人物
大川社長:2代目社長。時代に合わせた会社にしようと、経営についても積極的に学び、従業員教育にも注力している。
小森:他社での経験を買われ、2年前に転職してきた30代職人。腕はいいが、あちこちから借金をしており、住民税の滞納などもある。妻と5歳の娘がいるが、家庭は上手くいっていない。
徳田:パート従業員。経理を担当。30代で夫と小学生の息子がいる。テキパキとした仕事ぶりで社長の信頼も厚い。
取引先から
無断欠勤の連絡が…
朝8時。会社で帳簿のチェックをしていた大川の携帯が鳴った。取引先の管理部長からだった。
「お宅の小森君が現場に来てないようだけど、どうしたの?」
「えっ?すみません。すぐに連絡してみます」
社長は慌てて小森の携帯に電話を入れた。何度コールしても一向に電話に出ない。社長は従業員名簿を取り出し、自宅に電話を入れてみたが、やはり誰も出なかった。