中央集権体制よりも勢い増す
「コンパクト・デモクラシー」とは?

 だが、既存政党も安泰ではない。全国一律の新型コロナ対策を実施しようとする中央集権体制よりも、地方自治体や、中小規模国家・地域の「コンパクト・デモクラシー」が台頭しているからだ。

 中央集権体制のフランスでは、エマニュエル・マクロン大統領率いる与党「共和党前進」が統一地方選で惨敗した。一方、欧州主要国の中で新型コロナによる死者数が圧倒的に少なく、経済再開も早いドイツは、州政府が警察や教育など内政面で幅広い権限を持つ連邦制である。

 ドイツでは、州政府が現場の状況を掌握して連邦政府よりも先行して動くという政策決定のパターンが効果的に機能している。例えば、マルクス・ゼーダー・バイエルン州首相は、イタリアから国境を越えて新型コロナの感染が広がっている状況を連邦政府に報告し、国境閉鎖に踏み切った。そして、国境を接するオーストリア、スイスとの連携を構築した。

 またバイエルン州は、中央政府に先んじて100億ユーロの中小企業向け支援プログラムを発表。さらに、近隣の州と共同で、全国に先駆けてドライブスルー方式でのPCR検査の導入を決定した。ゼーダー州首相は、国民から高い支持を得て、メルケル首相以上に注目を集める存在になっている。

 日本においても、全国一律の政策実行を意識して意思決定が慎重になりがちな安倍政権よりも、地方自治体に注目が集まっている。

 例えば、4月に安倍晋三首相が「緊急事態宣言」の発令に慎重だったとき、小池百合子・東京都知事は首相に決断を促す強いメッセージを発した。また、緊急事態宣言が発令された場合の都の対応措置に関する概要案を先行して公表するなど、スピーディーな対応を取った(第240回・P.2)。

 大阪府の吉村洋文知事の奮闘も、「#吉村寝ろ」という府知事を励ます言葉がツイッターのトレンド入りするほど注目を集めた。吉村府知事は、緊急事態宣言の発動前から週末の外出自粛を府民に求め、厚生労働省による感染者数の非公式の試算をあえて公開して、独自の判断で兵庫県と大阪府間の週末の往来自粛を呼び掛けた(第240回・P.3)。

 他にも、さまざまな地方自治体が独自の新型コロナウイルス対策を打ち出す事例が増えている。その代表例が、米紙「ワシントン・ポスト」から「和歌山モデル」と称賛された和歌山県の仁坂吉伸知事だ。感染ルートの追跡を徹底することによって、新型コロナウイルスの封じ込めに成功している。