大学執行部交代が背景に?

 日大はこの秋、理事長らの改選期を迎える。

 学長はすでにホームページでも交代が発表されている。アメフト危険タックル問題の際に、しばしば記者会見に登場した大塚吉兵衛学長が8月末に任期切れで退任。代わって、文理学部長だった加藤直人教授が学長に就任する。加藤教授といえば、危険タックル問題が起きたときのアメフト部部長だ。

 そして、あの一連の騒動の間、ついに一度も記者会見を開かず、報道陣の前に姿を現さなかった田中英壽理事長も、9月初旬に4期目の任期を終える。新しく選ばれる理事の互選で新理事長が選ばれる段取りだが、田中理事長が5期目に突入する可能性はあると、日大関係者は話す。

 あのとき、道義的、倫理的な責任だけでなく、田中理事長の経営責任を問う声も上がった。大学経営の重要な財源の一つである国からの「私学助成金」が、平成30年度は35%(約33億円)も減額された。受験者数も減ったため、受験料収入も減った。元日大教授らが設立した「新しい日本大学をつくる会」や現役教員らは、田中英壽理事長らに賠償を求めて提訴した。

 しかし、田中理事長はなんら責任を取ることなく、職にとどまった。結果どうなったかといえば、2年後には私学助成金も以前の水準に戻り、2019年度には約94億円が支給された。受験者数もたちまち回復し、今春は2年前より微増だが増えている。

 つまり、田中理事長は沈黙を守る戦略で、見事に「危険タックル問題」のダメージを小さなアクシデントにとどめる辣腕ぶりを示したことになる。

 外部から、そして現役の職員からも変わらない体質への憤りとジレンマの声が聞かれる。だが、難攻不落の体制は揺るぐ気配がない。今回の報道によって、もう一度信用にダメージを与え、世論を動かして変革をもたらす意図があったのかどうかは不明だが、少なからず、寝た子を起こす程度の騒ぎにはなったのかもしれない。改めて日大内部で真剣に議論され、変革されることを、多くの人たちが求めていることは再認識された。

 これはスポーツ全体にも関わる問題であり、教育現場の環境そのものに直結する重大な問題である。経営はもちろん重要だが、教育の現場で経営が教育より優先されるのは本末転倒だ。