趣味は「自分の限界に挑戦」
レジ袋有料化でうごめく挑戦の虫

 Cさん(40歳男性)はごく普通の会社員だが、自分の限界に挑戦するのを好む。この特性が学業、趣味、仕事に発揮された際は周囲の尊敬を集めるが、彼はよくわからない限界(たとえば「風呂の設定温度は何度まで耐えられるか」や「長期休暇を利用して東京から長野まで歩いて行けるか」など)に挑戦するのもしょっちゅうであり、そうした時は周囲からさまざまな意味のこもった「すごい」を浴びている。
 
 レジ袋有料化が実施されて、Cさんの中の虫がうごめき始めた。
 
 「レジ袋を買うのとマイバッグを持ち歩くのが嫌で、いつも買ったものを手持ちしていたが、ある時から『一体どれくらいの量まで手持ちできるのだろうか』というのが気になってきて、挑戦したくなった」(Cさん)
 
 いい大人がよせばいいものを…と感じてしまうが、火がついたCさんは誰も止めることができない。Cさんは自宅から徒歩4分の最寄りのコンビニで買い物をする時のみ、このトライアルを始めることにした。
 
 「『これは無理だろう』と感じるくらいの量の時に試行錯誤するのが一番楽しい。どれか1つか2つを置いていくという選択肢はないから、何が何でも持とうとする。必死になると不思議なもので、なんとか持ちきってしまう。追い詰められて脳がフル回転し『このガムは髪の間に挟んでみてはどうか』や『このパンは、袋に指を貫通させてぶら下げておけば、両手を実質まだフリーにできるのでは』などのアイデアが次々に湧いてくる。『人間ってすごいな、俺ってすごいな』と快感を覚える」(Cさん)
 
 そんなCさんにも、反省点と注意点が1つずつあるらしい。
 
 「『これはもう絶望しかない』という量の時、Tシャツの裾を上にめくって風呂敷状の受け皿を作り、そこに買ったものを入れて運んだことがあるが、あれはよくなかったのでもうやらないようにしたい。自分の体を使っているわけではないから卑怯で、工夫がなくても結構な量が運べてしまうから面白みもなかった。また、往来でヘソを出して歩くというのもよろしくない。
 
 注意点は、買った商品一つ一つにテープを貼ってくれる店員がレジを担当する時。店舗側がどういう指導をしているかはわからないが、最寄りのコンビニではテープを貼ってくれる店員が2人いて、その時はレジ袋の購入を申し出るようにしている。自分の“挑戦”のために、わざわざ一つ一つの商品にテープ貼りをさせるのが無性に申し訳なく感じられるので。“挑戦”時は買う品数も多いし」(Cさん)
 
 独自の世界を邁進(まいしん)しているので、そこに見られるこだわりもなかなか他人の理解を得られなさそうだ。我々はやはりCさんに向けて、いつも彼がそう言われている通りに、さまざまな感情を込めて「すごい」という言葉を送るほかない。
 
 今回は、レジ袋有料化とマイバッグ流行の流れにあらがう、三者三様の生き様を紹介した。「マイバッグを持たない」「レジ袋をマイバッグとしてリメークする」「レジ袋およびマイバッグを使いたがらない」というそれぞれのアプローチで、どれも“時代への抵抗”という形を取ってはいるが、その姿勢や考え方は柔軟であり、現況を楽しんでいる様子が伝わってくる。
 
 レジ袋有料化からまだ2カ月もたっていない現在は「レジ袋が有料」ということにまだ違和感が残るが、ある程度時間がたったらみんな慣れ、やがて「有料が当たり前」という社会通念も形成されるであろう。
 
 法施行初期のこのガチャガチャした感じは多方面で苦労を生じさせていることと思うが、可能な範囲内においては上記3人の楽しげな生きざまを見習って、落ち着くまでの激動を心健やかに過ごしたいと思わされた次第である。