天然ガス価格が高騰し、6月下旬からの上げ幅は約60%に達した。投機筋はさらなる上昇を見込んでいるが、生産業者は慎重な姿勢を崩していない。米国のアパラチア地域に集中する天然ガス生産会社は、春の新型コロナウイルス流行で大きな打撃を受けた。すでに供給過剰気味だったところにコロナが追い打ちをかけ、価格急落を受けて多くが掘削活動を休止した。だが、ここにきて価格が反騰しても、各社は生産再開に二の足を踏んでいる。米国でシェールガスブームが到来するのに伴い、各社が生産拡大に走ったことで市場の在庫がだぶついたが、最近は世界における生産の調整弁の役割を果たしている。彼らが今、ガス価格上昇に便乗しようとしていないことも、価格を支える一因となっている。ただ、いつまでも生産を再開しなければ、価格上昇というめったにない好機を逸することになる。