自我を超えた
大きな意識へのシフト

阿部:あるだろうね。
こうなった必然の背景には、たとえば環境破壊であるとか、核の問題であるとか、いわゆる男性社会の中で男性マインドが創り出してきてしまった破壊的な結果が、これまでの考え方ではもう人間では処理できなくなってしまっている。
それがまあ、もしかしたら地球という大きな意識が、ここらへんでバランスとんなきゃいけないってことで、こういう流れを作り出してるっていうふうにも考えられますよね。

向令孝(むかい・れいこう)1947年、大阪生まれ。高校3年生の時、父の急逝を目の当たりにして無常を観じ、関西学院大学1年生の時、たまたま臨済禅師の言葉「無位の真人」に出会って衝撃を受け、禅に傾倒し、現方広寺派管長・大井際断老師について参禅修行を始める。最初に参加した7日間不眠不休で坐禅をする荒行にて、いきなり見性(悟り)する。大学卒業後、大手流通企業に就職するが、29歳で出家得度し、6年間の雲水修業を経て兵庫県の相国寺派法雲寺住職となる。1987年より毎年ドイツに行き参禅指導を続ける。1995~2011年まで臨済宗方広寺山内の奥山青壮年研修所所長を務め、2007~2011年まで臨済宗方広寺派教学部長を務める。現在は浜松市の方広寺派祥光寺住職。 http://imakoko.hamazo.tv/

:そういうふうに捉えられるよね。
物事というのは、やっぱりそれなりの深い、われわれを超えたところの意味があると思う。

阿部:大いなる意図みたいな。

:だから、今まで、まあ、今の政府もそうだし、原子力の問題等々を見ても、結局は自我の意識とか権力意識とか、そういうものから全然離れられない、その執着の構造をずっと引きずっている。
実は、その自我の意識を超えた、いわゆるブッダの意識、すなわち宇宙的なその空間的広がりの中で、みんなともに大きなものを生きているんだね、っていう意識にシフトする、それこそまさに悟りなんだけれども、そういうふうにみんなの意識がシフトしないと、もう地球というのはどんなにあがいてみても解決不可能な問題を今、抱えていると思う。
だから、全体的な大きな意識の転換を実現せざるを得ないような歴史の転換点にあるんじゃないかという感じがする。

阿部:ある意味でいえば、この危機がイコール、チャンスである、と。

:そうそう。危機が変革のチャンスだということ。
なのに、そのままの、今までの状況をもっと続けましょう、というメッセージばかり。

阿部:そうなんだよね。