発達障害のひとつであるADHD(注意欠陥・多動症)の当事者である借金玉さん。早稲田大学卒業後、大手金融機関に勤務するものの仕事がまったくできずに退職。その後、“一発逆転”を狙って起業するも失敗して多額の借金を抱え、1ヵ月家から出られない「うつの底」に沈んだ経験をもっています。
近著『発達障害サバイバルガイド──「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』では、借金玉さんが幾多の失敗から手に入れた「食っていくための生活術」が紹介されています。
働かなくても生活することはできますが、生活せずに働くことはできません。仕事第一の人にとって見逃されがちですが、生活術は、仕事をするうえでのとても重要な「土台」なのです。
この連載では、本書から特別に抜粋し「在宅ワーク」「休息法」「お金の使い方」「食事」「うつとの向き合い方」まで「ラクになった!」「自分の悩みが解像度高く言語化された!」と話題のライフハックと、その背景にある思想に迫ります(イラスト:伊藤ハムスター)。
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 みなさん、お部屋は片づいていますか? 僕は「部屋をきれいに保つ」ということが大変苦手です。モノの整理・収納とかいう意識の高い問題の前に、「部屋がモノとゴミであふれる」という悲劇が起こってきます。

 気がつけば空のペットボトルが机に立ち並び、足元には使いさしのペンが何本も転がり、コンビニ弁当のゴミを突っ込んだビニール袋が床を占拠し、いつか使ったドライバーとガムテープがテーブルの上で重なり、その横に大切な印鑑と大事な書類が転がっている。ただでさえ社会生活に難を抱える僕たちが日々を生きる上で、このような事態はなんとしても避ける必要があります。「モノを探す」能力が極端に低い僕にとってこれはまさしく死活問題でもあります。

 この問題を解決するために、僕がおすすめしているライフハックが「ぶっこみ」です。収納グッズを買ってモノを定位置に戻すのは無理。だからただ一ヵ所にぶっこむ、これだけで生活はいっきにラクになります。

もう、収納グッズはいらない

 ぶっこみ収納の必須アイテムが「本質ボックス」です。これは「部屋の中で定位置が決まってないモノは、全部ひとつの箱にぶっこむ」というやり方です。

 この箱を導入してから「どこにあるかわからないから部屋の中を探す」という行動をしなくて済むようになり、生活は劇的に改善しました。発達障害者にとって、「見えないモノは存在しない」。だからこそ、「絶対にここを探せばある」という安心感が大事なのです。

 本質ボックスの運用ルールは次の通りです。

【本質ボックスのルール】
・箱は、中身が見えるスケルトンか、網目状のもの。フタはつけない
・本質ボックスは、最大3つまで。それ以上増やさない
・本質ボックスからモノがあふれたら、捨てる

デカいゴミ箱を3つ用意せよ

 この本質ボックスで「保管すべきモノ」の片づけは解決したのですが、僕の部屋にはその後新たな問題が発生しました。ゴミが部屋にあふれたのです。

 僕は飲み終わったペットボトルを捨てるために、歩いてゴミ箱に向かうことがどうしてもできませんでした。結果、デスクの上には常に数十本のペットボトルや缶が積み重なり、地層が形成されました。さらに、机の上の書類や筆記用具、ガジェット類と混ざることで、デスクでする作業もゴミをかき分けて行う事態に……。

 そこで僕が開発したのが「ゴミ箱が来い」ハックです。これは「自分が座る場所のすぐ横に、ゴミ箱を置く」という、極めてシンプルなものです。

 こう書くと部屋が広いと思われがちなのですが、僕の家のデスクからゴミ箱までの距離は、たった10歩ほどです。でも、僕にとってはこの距離が、パプアニューギニアより遠い。「俺はゴミ箱まで行けない。ゴミ箱が来い」。これが僕の結論です。

 そこでデスクのすぐ横に、ペットボトル用と可燃ごみ用のゴミ箱をひとつずつ設置したところ、これが劇的な作用をもたらしました。部屋が汚れていく速度が格段に遅くなり、汚部屋を回避できたのです。

 ゴミ箱のルールは次の通りです。

【ゴミ箱が来いのルール】
・ゴミ箱は「45リットル・プラスチック製・フタつき」を3つ用意する
・あなたが最も時間を過ごす場所から「手が届く場所」に、2つを設置する
・3つめは予備。2つのゴミ箱があふれたらベランダ(庭)に出し、予備を使う

汚部屋は「混在」から生まれる

 モノの状態は、常に移り変わっていくものです。たとえば、ティッシュの箱を想像してみてください。中身が入っているうちは、それは「定位置が決まっているもの」でしょう。テーブルの上なんかに置いてありますよね。しかし、これが空になったときそれは「ゴミ」になります。この「ゴミ」が正しくゴミ箱に移動しないところから、物品の堆積が始まってしまうのです。本質ボックスがなければ「保存しなければならない物品」の上にゴミが地層のように重なっていくことも起きるでしょう。床に「地層」が形成されてしまえば、それは膨大な発掘と選別の作業が部屋の修復に必要とされてしまいます。自宅の考古学にはもううんざりです。

 本質ボックスとゴミ箱を使うことで、部屋の中に存在するあらゆる物品は3種類に仕分けることが可能になります。

1 本質ボックスの中身(定位置は決まっていないが保存する必要があるもの)
2 定位置が決まっているもの
3 ゴミ

 僕の膨大な失敗経験から結論します。この3つが混在してしまうこと、これが汚部屋の発生原因です! すなわち、この3つが分離されてさえいれば、大きな問題は起こりません。さまざまな収納グッズを購入しては使いこなせなかったみなさん。とにかくシンプルに「ぶっこみ」で、やっていきましょう。

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