発達障害のひとつであるADHD(注意欠陥・多動症)の当事者である借金玉さん。早稲田大学卒業後、大手金融機関に勤務するものの仕事がまったくできずに退職。その後、“一発逆転”を狙って起業するも失敗して多額の借金を抱え、1ヵ月家から出られない「うつの底」に沈んだ経験をもっています。
近著『発達障害サバイバルガイド──「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』では、借金玉さんが幾多の失敗から手に入れた「食っていくための生活術」が紹介されています。
働かなくても生活することはできますが、生活せずに働くことはできません。仕事第一の人にとって見逃されがちですが、生活術は、仕事をするうえでのとても重要な「土台」なのです。
この連載では、本書から特別に抜粋し「在宅ワーク」「休息法」「お金の使い方」「食事」「うつとの向き合い方」まで「ラクになった!」「自分の悩みが解像度高く言語化された!」と話題のライフハックと、その背景にある思想に迫ります(イラスト:伊藤ハムスター)。連載一覧はこちら。
収納は「かける」に特化する
みなさま、洗濯は得意ですか? 僕は大の苦手です。もちろん、服を洗濯機に放り込んで洗剤を入れてボタンをポチっと押すところまではいいんです。そこから先の、取り出してシワを取って、干してたたんで収納する。これがどうしてもできません。
若いころは、洗濯して干した服を部屋の片隅に常に放り投げていたため、常に部屋に服の山が屹立していたこともありました。使うときになると、その中からゴソゴソと服を発掘して着るのです。このせいでなんど待ち合わせに遅刻したか、思い出せないくらいです。着たいシャツが急いでいるときに限って見つからない……。
この問題を解決する方法はあります。まず覚えておいていただきたいのは「たたんで収納する」「引き出しに服をしまう」これらは、完全に悪い文化だということ。あんなことをわざわざやる必要はない。まずはこれを認識することが重要になります。
あなたが買うべきものは、3種類。
・大きなハンガーラック
・大量のハンガー
・ランドリーバスケットを2つ(下着用、靴下用)
これで、かけられる服はすべて、ハンガーにかけてしまいます。服の収納を「かける」に特化するのです。
そして、その下のランドリーバスケットには下着類などの、シワがついても気にならないものをまとめてぶちこんでしまいましょう。アンダーウェアにきちんとアイロンがかかっている必要、実はないですよね?
なお、クリーニング屋を使う場合は、3つめのランドリーバスケットを用意して、クリーニングに出すべき服をまとめてぶちこんでおくことにしましょう。たまってきたなと思ったら、クリーニング屋に持っていく。返ってきたらハンガーラックにかける。これだけです。
服を循環させよう
服の管理とは「システム」です。このかける収納を始めると、服が「循環」するのが見て取れるようになると思います。ハンガーラックからあなたの身体へ、あなたの身体から洗濯機へ、洗濯機からハンガーラックへ。この形ができればしめたものです。
結局のところ、あなたの部屋の床に洗濯物がうずたかく積もっていくのは、この循環がどこかで止まってしまっているからに他なりません。そして、その停止ポイントはおそらく「たたむ」「収納する」のあたりでしょう。できないことはやらないのが一番です。
あなたの引き出しの中には永遠の眠りについている服のデッドストックがたくさんあるのではないでしょうか。あの服が目覚めることはおそらくないので、ひきだしごと全部捨てちゃったほうがいいですよ。「見えないものは存在しない」。これが僕らの収納の鉄則です。