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スマートフォンの理想と現実

“5”でiPhoneに翳りが見えた?
日本勢のラストチャンスはあるのか

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第33回】 2012年9月14日
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 しかし多くの消費者は、必ずしも高いスペックを求めるわけではない。むしろ、ちょっとした操作性の気づかいであったり、斬新だが使いやすいインターフェースだったり、あるいは新しいアプリやサービスに日々アクセスできる利便性といったことを、より積極的に評価するはずだ。それこそ、iPhoneが登場した当初が、そうだったように。

 そうした提案が不足してくると、買い替えサイクルは長期化していく。ちょうどiPhone4Sユーザが少なからず感じているであろう、「新しいのも魅力的だけど、しばらくはこれでいいよね」という気分である。

 そしてそうした気分の変化を自覚したとき、私たちはあることに気づく。そもそも自分はこれまで、ケータイを「使い切って」から買い替えていたのだろうか、と。もしかすると、まだ使えた端末を、なんとなく買い替えていなかったか、と。

 オーバースペック、買い替えサイクルの長期化、過剰流動性への自覚――こうしたフィードバックに入っていくと、その製品群が持つライフサイクルは、すでに折り返し地点を越えたことになる。つまるところ、iPhoneというコンセプトの、陳腐化である。

 もちろん、フィーチャーフォンが陳腐化した時とは、競争環境が違う。iPhoneのコンセプトが陳腐化したところで、前述の通り競合が敵失している状態では、消費者はiPhoneを選ばざるを得ない。知財に関する問題がなかったとしても、パソコンやネットに不慣れな向きには、Android端末を使いこなすのは容易ならざることだろう。すなわち、スマートフォンへの漠然としたニーズに対して、そもそも選択肢が不足しているのだ。

 アップルがこの状況を「時間稼ぎ」に使うことも可能だ。そしてその場合はコンセプトの陳腐化を割り切ってでも、スペックや品質の向上、あるいは調達の妙による利益率の改善を目指した方が、競争力は強化される。おそらく次期iPadくらいまで、アップルはこうした戦術で進むことだろう。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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