4月に発表された、「ルンバ」のフルラインナップ6機種(アイロボットプレスリリースより)4月に発表された、「ルンバ」のフルラインナップ6機種(アイロボットプレスリリースより)

ロボット掃除機「ルンバ」で知られる米iRobot社が連邦破産法を申請した。同社を買収するのは、ルンバを製造していた中国のOEMメーカーPICEAである。しかし「ロボット掃除機といえばルンバ」というくらいルンバの人気は高く、少し前まで同社の経営状況は悪くなかった。ロボット掃除機の第一人者である企業が破綻に至ったのは、いったいなぜなのだろうか?(中小企業診断士  関谷信之)

3月、米本社と日本支社でまったく違うリリースが……

「当社が継続企業として存続できるかどうかについて大きな疑問があります」(米 iRobot Corporation、2025年3月12日)

「企業としての存続不可といった状況には全くございません」(アイロボットジャパン合同会社、2025年3月15日)

 日米で相反するようなプレスリリースが発信されてから9カ月。どうやら米国本社の発表の方が実態に近かったらしい。ロボット掃除機「ルンバ」シリーズを製造・販売するiRobot社(以下、アイロボット)が、日本の民事再生法に相当する「連邦破産法11条」適用を連邦破産裁判所に申請した。

 中国勢に「価格で負けたから」「性能で負けたから」という意見が散見される。だが、アイロボットの技術力は、決して低くなかったはず。2011年3月、メルトダウンした福島原発の原子炉建屋構内に初めて入り、放射線量測定を行ったのは、アイロボット製ロボット「パックボット」だった。当時「ロボット大国」を喧伝していた日本をはるかに凌駕する技術を持っていたのである。なぜ中国に遅れをとったのか?