「創造」と「共生」
グローバルリーダーのキーワード
日本の多国籍企業の代表格であったエレクトロニクス企業の巨大赤字、対して新興国マーケットの成長を着実に取り込んだ韓国勢の躍進。日本の得意とするモノづくりにおいてさえ、国際競争力が失われつつあるのか。閉塞感に苛まれるわが国の状況に対峙して、繰り返し言われるのは「世界規模で価値創造活動を展開し、競争優位を築いていく経営」すなわちグローバル経営と、それを推進するグローバルリーダーを速やかに体系的に育成せよということである。
われわれ神戸大学経営学研究科も、学部と大学院(社会人大学院も含め)双方で、グローバルリーダーの育成にどのような貢献ができるのかについて議論を重ねてきた。本連載では、グローバルリーダー育成に向けて日本企業が挑戦すべき課題を3回にわたって検討していきたい。執筆は神戸大学大学院経営学研究科の金井壽宏、平野光俊、忽那憲治、國部克彦が担当する。
さて、グローバル経営において、人材は、モノ、カネ、情報といった他の資源に比べて現地特有の社会文化的影響をもっとも強く受けており、人材育成の世界標準が存在するわけではない。まずは、日本で生成し鍛えられた人材育成の強みを放棄することなく見極めることが肝要である。しかしそれだけでは足りない。世界規模の効率性を追求しつつ、国境を越えて多様な人材を巻き込みながら学習し、日本企業の再生さらには「超回復」を駆動するグローバルリーダーを考えなければならない。連載1回目はこの点について金井と平野で検討する。