米国で高まる反中感情
経済や先端技術で脅威に

 トランプ米大統領が現在、激しい中国非難を繰り返しているのは、新型コロナウイルスで18万人以上もの死者を出した失策で再選が危ぶまれる中、支持層を確保するためと考えられる。

 だが大統領選でバイデン候補が勝ち民主党が政権を握っても米国が親中的になるとは思えない。せいぜい言辞が温和になる程度だろう。

 米国民の中に反中国感情が高まっているからだ。

 中国のGDP(国内総生産)は2018年13.4兆ドルで、米国の20.6兆ドルの65%の規模に達した。新型コロナの蔓延で米国のGDPは4月~6月期で32.9%減となったが、中国は死者を約4600人で食い止め、同期間にGDPは3.2%増となった。

 この傾向はしばらく続きそうで、これまで「中国のGDPは2030年頃に米国を上回る」と予測されていたが、逆転の時期はそれよりも早くなりそうだ。

 IMF(国際通貨基金)が物価の違いを勘案して計算したPPP(購買力平価)では、中国の昨年のGDPは27.3兆ドルで米国の21.4兆をすでに上回っている。

 工業生産では中国がほとんどの品目で米国をしのぎ、例えば昨年の自動車生産では中国が2572万台に対し米国は1088万台だった。

 最先端の電子技術でも中国が米国を追い越す局面が出ている。

 これに対し米国人が嫉妬、脅威の感情を抱くのは必然だ。

 1990年代には日本が米国人のバッシングの矢面に立ち、メディアはこぞってUnfair Trade Practice(不公正な貿易行動)を叫び“Nuke Japan”(日本を核攻撃せよ)のステッカーを貼った車が走り回った。

“The Coming War With Japan”(迫り来る日本との戦争)と題した本がベストセラーの一角を占めたこともあった。

 日本は米国の市場開放要求などに譲歩を重ね、やがて経済成長も停滞したから、米国人の対日感情は嫉妬から優越感に戻った。

 だが中国は時に譲歩もするが、制裁には報復措置で対抗するし、2019年も経済大国としては例外的な6.1%もの成長率を続けている。

 米国人の中国への反感は党派を超え、むしろ人種的な感情が表面化しているように思われる。

 その状況下で米国と中国の艦艇、航空機の衝突など不測の事態が起こると、トンキン湾事件の再現にも発展しかねない。