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菅義偉新首相は「縦割り行政の打破」を掲げて日本のトップの座についた。そんな菅首相にとってキャッシュレス化政策の改革は、その手腕を発揮するための絶好の舞台といえる。キャッシュレス化は、3省庁にまたがる省益と2つのガラパゴス問題という根深い問題を解決しなくては推進できない政策だからだ。(京都大学経済学部特任教授 宇野 輝)

政府がデジタル戦略の中核に置く
キャッシュレス化の実現性を問う

 自民党総裁選の論戦における重要なテーマの1つが、わが国のデジタル戦略だった。新たな首相となった菅義偉氏は「デジタル庁」の設立構想を打ち立てた。また、菅氏の対抗馬だった岸田文雄氏も「データ庁」とデジタルトランスフォーメーション(デジタル化による変革、DX)を推し進める「政府DX推進委員会」の創設する考えを示していた。

 デジタル化を巡る政策の転換は、たとえ安倍晋三前首相の電撃的な辞任がなかったとしても、待ったなしの状況だった。2020年7月、政府は「経済財政運営と改革の基本方針2020」において、すでにその方針を示していたからだ。

 そこで示された施策は、新型コロナ感染症の危機に直面し、わが国の社会構造が先進国の中で、いかにデジタル化が遅れているかを露呈させた反省から出てきた施策である。この諸施策の実現に当たり、政府は具体的な成長戦略の実行計画案を同時に発表していた。

 実行計画案ではデジタル化の主要な施策として、決済インフラの見直しおよびキャッシュレスの環境整備を挙げ、決済インフラに関する法整備やキャッシュレスの環境整備の問題点を提起している。

 そして具体的なキャッシュレス決済の目標値として、キャッシュレス決済比率を現在の約20%強から2025年までに40%程度とし、将来的には世界最高水準の80%程度を目指すとしている。

 本稿においては、政府がデジタル化の1丁目1番地に位置付けている、キャッシュレス決済比率目標の実現性およびキャッシュレス決済に関わるデジタル化施策の諸課題について、わが国の歴史的な経緯を踏まえて論じてみたい。