米国の大統領選まで1カ月を切った。
先週、トランプ現大統領(共和党候補)とバイデン元副大統領(民主党候補)が初めての公開討論会に臨んだ。バイデン候補の方を向きながら、指差しながら、相手の発言中に口を挟んだり、司会者の指示を無視したりしていたトランプ候補。品格や礼儀を含め、相手との差別化をアピールしたかったのか、冷静沈着に、相手の方ではなくテレビ画面を見つめようとしていたバイデン候補も、トランプ候補の挑発に乗ったのか、相手に対して「彼がうそつきなのはみんな知っている」「黙れ!」といった発言で応戦し、国内で多くの死者や感染者を出したトランプ大統領のコロナ対策を徹底批判した。
双方の現状認識や未来展望、戦略や政策を知るには全く物足りない、非建設的な議論であったというのが大多数の視聴者のコンセンサスであっただろう。米国に住む筆者の知人からは、「醜い」「史上最悪の討論会だった」「米国という国家の劣化を露呈している」「米国人として恥ずかしい」といった感想がもたらされた。
皮肉にも、同討論会が終了して間もなく、トランプ大統領とファーストレディが新型コロナウイルスに感染したことが発表された。筆者が本稿を執筆している現在も、情報は錯綜しているものの予断を許さない状況が続いているようである。世論調査を参考にする限り、依然としてバイデン候補が優勢であるように見受けられるが、俗に言うところの「オクトーバーサプライズ」、あるいは「ノーベンバーサプライズ」という観点から、トランプ候補が形勢を一気に逆転するための切り札を隠し持っているという推測も後を絶たない。
いずれにせよ、コロナ禍における米大統領選は泥沼の中の蛇行運転を余儀なくされ、投票の集計方法、選挙結果の正当性といった問題を巡っても、一筋縄に物事が進まないであろう。
中国は、そんな米大統領選をどういう角度から眺めているのだろうか。
「XXXXに勝ってほしい」という希望的観測もあるだろうし、「YYYYが勝つだろう」という現実的分析もあるだろう。自らの国益を守るために、米大統領戦の過程と結果にどう向き合うか、筆者が見る限り、中国共産党は使える全ての資源を駆使して、米大統領戦の分析や予測を行い、前後の対応策を練っている。本稿では、一般投票の約1カ月前という現時点における、中国共産党の米大統領選への捉え方を掘り起こしてみたい。