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中東情勢の緊迫で乱高下する原油価格。連載『ビジネスパーソンに必須!経済&ビジネスの最重要キーワード』の今回のキーワードはWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)。原油価格動向を伝える際に頻繁に登場します。実需では存在感のある指標が他にもある中で、WTIは、なぜ世界の原油相場の代表的指標と見なされているのでしょうか。WTIの意味や特徴、指標化した歴史、2020年のマイナス価格の背景まで分かりやすく解説します。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
WTIが原油価格の代表指標
として報じられる理由
今回のキーワードは「WTI」です。
2月28日に始まった米国とイスラエルによるイランへの軍事行動をきっかけに、原油価格は急騰しました。その後は停戦への期待が強まると下がり、情勢悪化への警戒が高まると上がるなど、荒い値動きが続いています。
こうした原油価格の動きを伝える際に、メディアでよく取り上げられるのがWTIの先物価格です。先物価格とは、将来の特定の期日に受け渡す商品を、あらかじめ決めた価格で売買する取引の価格です。WTI先物は(期日が最も近い)期近物が指標とされています。ニュースではその価格が「原油価格」として紹介されることが少なくありません。
WTIは「ウエスト・テキサス・インターミディエート」の略です。ただし、「テキサス西部で採れる原油」と捉えるのは少し単純化し過ぎです。
実際には、WTIはテキサス州やニューメキシコ州など米国産の軽質・低硫黄原油の総称です。先物の決済時の現物の受け渡し地点はオクラホマ州クッシングにあります。軽くて硫黄分が少ないため、ガソリンやナフサなど付加価値の高い製品を取り出しやすい原油です。
ちなみに、「ニューヨークの原油先物市場の価格は――」と報じられ、WTIという名称が前面に出ないこともあります。これはWTI先物が、ニューヨークマーカンタイル取引所(NYMEX)で取引されているためで、結局はWTIのことを示しています。
価格は1バレル当たり幾ら、という形で示されます。1バレルは42米ガロン、約159リットルです。バレルは樽の意味です。米国で石油が掘られ始めたときに、樽に詰めて運んでいたために単位名となりました。
WTIの登場以前の1970年代まではいわゆる石油メジャーが価格決定に強い力を持っていました。その後、73年の第1次石油ショック、79年の第2次石油ショックを経て、OPEC(石油輸出国機構)など産油国が取って代わります。
石油メジャーにせよ、産油国にせよ決定過程に透明性は乏しかったことは否めません。
そんな中、83年にWTI先物がNYMEXに上場されます。取引所で価格が形成される透明性の高い指標が生まれたことで、石油会社や航空会社などが価格変動リスクをヘッジする手段として活用し、WTIは世界で最も注目される原油先物の一つになり定着していきました。
ただし、他にも、世界で取引される原油の値決めの約3分の2を占め「実需」の価格基準として重視される北海ブレントやドバイ原油といった指標もあります。では、なぜ、WTIが注目されるのでしょうか。
次ページでは、2020年に起きたWTI価格のマイナスという異例の事態となった背景や、北海ブレントやドバイ原油との違いを見ていきます。








