志賀見聞録 自動車産業の半世紀とミライPhoto:HONDA

ホンダが2027年3月期までに最大2.5兆円の損失を計上する見通しとなった。電気自動車(EV)を軸に電動化100%にかじを切っていた世界の自動車メーカーも、相次いで巨額損失の計上を迫られている。EV一辺倒の戦略修正を迫られたわけであるが、かといってEV投資をやめるわけにもいかない。連載『志賀見聞録 自動車産業の半世紀とミライ』の第6回【ミライ編1】では、自動車メーカーの経営に長く携わってきた筆者が、この難局をどう乗り越えるべきなのか、そのヒントを探る。(日産自動車元COO〈最高執行責任者〉 志賀俊之)

>>第1回【過去編1】「ゴーンさんが羽田空港で逮捕されたらしいです(2018年11月19日)」から読む

>>第4回【過去編4】「日産リバイバルプランの誕生日(1999年10月18日)」から読む

応援していたホンダがEV戦略見直し
巨額2.5兆円損失の衝撃

 衝撃的なニュースが飛び込んできた。ホンダが電気自動車(EV)戦略の見直しを決断し、2027年3月期までに最大2兆5000億円の損失を計上すると発表したのだ。

 背景にあるのは、米国の政策転換だ。トランプ政権の発足により、環境規制の緩和やEV補助金の見直しが進み、市場拡大に急ブレーキがかかった。これを受けて、ホンダは北米で予定していたEV3車種の開発・販売を中止し、巨額の減損や関連費用が発生することになった。

 思い返せば21年4月、ホンダの三部敏宏社長は就任後初の会見で、「40年までに世界で販売する新車を全てEVかFCV(燃料電池車)にする」と宣言した。私はその言葉に思わず拍手を送っていた。というのも、私自身もEVシフトを推進してきた当事者の一人だったからだ。

 昨年の12月5日、日産グローバル本社(横浜・みなとみらい)近くのレストランで、初代「日産リーフ」15歳の誕生会が開催された。開発責任者をはじめ、開発・生産・販売に携わった社員やOB・OGが集い、当時の苦労や思い出を語り合った。万難を乗り越えた者だけが共有できる達成感が、そこにはあった。

 私にとっても、10年12月3日に、全国各地で実施したワークショップ「EVのある街づくりアイデア」に参加された市民の方々と一緒にお披露目した初代リーフの発表会は、COO(最高執行責任者)時代で最も印象に残るイベントの一つだ。

 カルロス・ゴーンがEV導入を最初に口にしたのは、06年にダボス会議(世界経済フォーラム)から帰国した直後だったと記憶している。同会議での気候変動議論が強く影響したのだろう。

 ゴーンの構想は明確だった。