コロナ禍で飲食店やホテルの苦境は言わずもがなだが、こうした外食産業に食材を納める業務用の食品卸業者にも当然厳しさは波及している。とくに高級食材を扱うところほど「巣ごもり消費」の恩恵が乏しく、売り上げが落ち込んでいる。そこを狙いすまして活動するのがBtoBの領域で活動する「取り込み詐欺」だ。振り込め詐欺や投資詐欺などと異なり社会問題化しにくいため、世間ではあまり知られていないが、被害は深刻だ。今回の取材で、いままさに「営業」している取り込み詐欺会社の実態が浮き彫りになった。(東京経済東京支社情報部 井出豪彦)

犯罪の証明が難しい
取り込み詐欺の手口

エントランス取り込み詐欺会社とみられるA社のエントランス 写真:東京経済

 そもそも「取り込み詐欺」とはいかなる詐欺か。

 経営が苦しく、喉から手が出るほど売り上げが欲しい物販の会社があるとする。

 そうした会社の中には、新規取引先からの注文の電話に飛びつき、相手のことをろくに調べずに売ってしまうところも少なくない。

 詐欺師たちは、こうした会社に狙いをつける。

 仮に初回取引は前金やキャッシュ・オン・デリバリー(代金引換)を条件とするなど慎重であっても、数回小口取引を重ね、物販会社を安心させる。これが常とう手段だ。

 そして、頃合いを見て「今度はまとまった量を買うので“掛け売り”にしてほしい」ともちかけ、応じたが最後、代金は払わず商品とともに“ドロン”する。

 振り込め詐欺などのいわゆる「特殊詐欺」が登場するずっと前から存在する古典的な手法だが、一向にすたれない。