9月8日のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の会合で、中国の胡錦濤国家主席は、「経済成長は、著しい下押し圧力に直面しつつある。一部の中小企業は厳しい状況に置かれ、輸出企業は一段と困難に直面しつつある」と異例の表明を行った。

 世界経済の牽引役として活躍した中国の元首としては、かつてない厳しいトーンに満ちた発言である。この発言を裏付けるように、中国の8月の鉱工業生産指数(前年比)はプラス8.9%に落ち込んだ。同指数の9%割れは、2009年5月以来の低水準である。

 生産の象徴である鉄鋼業にも、減速は顕著に表れている。中国鋼鉄工業協会によれば、今年の粗鋼生産量は6億7868万トンで、前年比マイナス0.7%の見通しだ。もしマイナス成長となれば、1981年以来31年ぶりの異常事態となる。

 こうしたシビアな状況を端的に表すのが、中国向け鉄鉱石輸出価格(スポット価格・鉄分62%)の急落である。同価格は、昨年9月には1メトリックトン=181.0ドルの高値をマークしていた。ところが、需要急減から8月30日には88.7ドルにまで急落し、1年で半値以下に沈んだ。

 中国の国家発展改革委員会は、約1兆元のインフラ投資計画55件を一括承認したと発表した。鉄道、高速道路、港湾などを主としているが、どの程度の浮揚力があるかは、エコノミストの間でも意見が分かれる。しかし、リーマン・ブラザーズ破綻後の景気刺激策が約4兆元であったことを考えると、ポジティブな効果は限定的とみるのが妥当かもしれない。