リーダーシップの取り方をずっと変えない管理職や経営者がいる。昔はうまくリーダーシップが取れていたのに、なぜか最近メンバーとうまくいかないという人は、方法を昔から変えていないということが問題かもしれない。組織をうまく機能させるには、リーダーシップの取り方を適宜切り替えていく必要がある。(心理学博士 MP人間科学研究所代表 榎本博明)
当初のやり方を踏襲していると、やがて不満が噴出する
かつては、リーダーシップを発揮できていたはずなのに、近頃チームのまとまりがなくなり、不満の声も耳にするようになった。自分としてはリーダーシップのとり方を変えているつもりはないのに、何が悪いのだろうか…。
このような悩みは、起業に成功したリーダーや組織の立て直しに成功したリーダーにしばしば見られるものである。だが、リーダーシップの取り方を変えていないということが問題なのではないだろうか。
起業した当初はうまくいっていたのに、事業が軌道に乗り、安定してきた頃から、従業員たちの不満が多くなり、職場の雰囲気が悪化するというのは、よくあることである。あるいは、組織が危機に見舞われ、大胆な組織改革に成功したリーダーが、組織が安定してくるにつれ、評判を落としていくというのも、けっして珍しいことではない。
その要因として、起業時や危機的状況では、この先どうなるかわからず、誰もが不安なため、みんなが一丸となって、まい進せざるを得ないということがある。不満をもったり、内部で争ったりしている場合ではなく、気持ちの余裕がない。
そのような段階では、多少強引であっても、進むべき方向に引っ張っていく強いリーダーが求められる。そうでないと何もないところに新たなものを生み出すことなどできないし、組織の大改革を成し遂げることなどできない。そこでは強引さが頼もしさにもなるのだ。
しかし、事業が軌道に乗って組織が安定してきたり、危機的状況を脱することができたりすると、従業員たちは、ただ付いていくというのでは満足できなくなる。それぞれのメンバーに自分を振り返る余裕が出てくるため、満たされない思いが表面化しやすくなるわけだ。
そのことに気づかずに、強引なリーダーシップ・スタイルを貫こうとすると、従業員たちの不満が募り、モチベーションは下がり、組織としてのパフォーマンスは低下していく。