人気のコロナワクチン株、先行きは要警戒Photo:PIXTA

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 新型コロナウイルスのワクチン開発競争は最終段階に入っているようだ。だが、バイオ技術株の投資家にとっては、災難の始まりかもしれない。

 バイオ技術株の投資家は、最近の下げをものともせず、近い将来のコロナワクチン開発成功を織り込んでいる。米製薬大手ファイザーとそのパートナーである独バイオ医薬ベンチャーのバイオンテックは、早ければ10月末にも最終段階の治験データを得る可能性がある。米バイオ医薬ベンチャーのモデルナもその後すぐにデータをまとめられる見通しだ。米製薬・日用品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)と米バイオ医薬品メーカーのノババックスも最近、最終段階の臨床試験を開始し、数カ月以内にデータを入手できるとみられる。

 楽観論があふれた状況だ。モデルナの株価は今年に入って3倍超、ノババックスは20倍超値上がりしている。いわゆる「ワクチン取引」は個人投資家の間で人気が高い。何といっても、連邦政府がワクチン開発をしようとする企業に資金支援をしている。それに加え、少なくとも理論的には、最大市場規模(TAM)は全人類だ。

 そうした高揚感が、医薬品開発の不安定な性質を見えにくくしている。医薬品候補の大半は発売までたどり着かない。発売されても予測不能な障害に見舞われることが多々ある。潜在的な安全性や有効性の問題は、開発プロセスのどの時点においても発生する可能性がある。