インターネットの「知の巨人」、読書猿さん。その圧倒的な知識、教養、ユニークな語り口はネットで評判となり、多くのファンを獲得。新刊の『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』には東京大学教授の柳川範之氏「著者の知識が圧倒的」独立研究者の山口周氏「この本、とても面白いです」と推薦文を寄せるなど、早くも話題になっています。
この連載では、本書の内容を元にしながら「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に著者が回答します。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。(イラスト:塩川いづみ)
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら

[質問]
 突然、読書が困難になりました。

 どんな本を読んでも目が文字の上を上滑りして内容が全く頭に入ってきません。文字は読めても文章が読めない状態です。こんなとき読書猿さんならどう対処されますか? 読書猿さんのような読書家でもこのような状態に陥った経験はございますか?

読み通せないときは、「読書の杖」を使おう

[読書猿の解答]
 私はもともと集中力と落ち着きがなく、読書がまったくできない子どもでした。1冊を読み切れず、何年もかかっていたくらいです。おそらくあなた以上に「読書が困難」だったと思います。

 元々読めていた人が読めなくなったときはまず、心身のコンディションをチェックします。視力が落ちても悩み事があっても寝不足でも同様のことが起こります。以前に読んだことのある本を読んでみると確認しやすいと思います。

 対策はそれらの問題を解消することですが、それらをした上で、必要なら「読書の手すり」「読書の杖」を使います。読書の手すりに使うのは、以前の記事で紹介した「ラーニングログ」です。

 読もうとする本が、今の自分にとっては難しくて、なかなか読み進められないような場合は、さらに読書の杖として『独学大全』でも紹介している「段落要約」という技法を使います。

 要は、本の段落数に合わせて空欄を用意し、読みながら段落の内容を要約し空欄を埋めていくのです。

 この技法は何か支えがないとずり落ちてしまいそうな読書の坂道を登るためのです。そういう意味では、杖の中でも登山用のピッケルが近いかもしれません。お気づきのように、これはかなり詳しく読むことを要求します。

 最初はざっと最後まで読んでしまって、空欄を埋めていく作業は2度目以降の読みにやるのがいいでしょう。時間がかかる作業なので、一度で完成させなくても構いません。自分が特に気になる章だけを取り上げてやってみる場合もあります。

 理解の難しいパラグラフ(段落)は、「?」マークを残して飛ばしてもいいでしょう。他のところを読んだ後なら理解できることがあるからです。この「杖」は、あなたがこの本のどこでどれだけ理解できたかできなかったかを克明に記録する、「理解度のセルフ・モニタリング」でもあります。時間をおいて読み返すと、自分がどれだけのものを今や理解できるようになったか、事細かに気づくことができるでしょう。自分の成長を詳細に知ることは、どんなことよりも強い読書の動機づけになります。