2014年から16年にかけて、世界の中銀はインフレ低迷への対応として次々とマイナス金利を導入した。もっともなことだが、エコノミストや投資家は当時、マイナス金利政策こそ先進国が進むべき道なのか否かを思案していた。だが、さまざま議論されたにもかかわらず、多くの面で近年最大の経済ショックである今年の新型コロナウイルス危機に対し、新たにマイナス金利政策を導入した主要国はない。既にマイナス金利を実施している国――特にユーロ圏、デンマーク、日本、スイス――も追加利下げはしていない。スウェーデンは2019年末、それまでマイナス圏にあったレポレートをゼロに戻したが、新型コロナ感染が広がる中で再び引き下げることはしなかった。