日本人の国内観光宿泊旅行は年間平均1.4回で、1回当たりの宿泊数は1.7泊と、ここ10年ほど伸び悩んだ状態にある。

 その背景にあるのが、宿泊旅行が休日に偏っているという構造的な要因だ。多くの旅行者は時間的制約から、ゴールデンウイークや冬季・夏季休暇などの長期休暇や、土日祝をメインとした利用が多く、休日は交通機関や宿泊施設が大混雑する一方、平日は比較的閑散としている。需要を反映して宿泊旅行は高額となり、足が遠のく理由にもなる。

ずらし旅の狙いは
旅行業のオフピーク

 これは利用者だけの問題にとどまらない。

 休日や繁忙期に需要が偏っている結果、事業者は従業員を正社員として安定的に雇用することが難しく、アルバイトなどの非正規雇用に依存しがちとなり、有能な人材が集まりにくいという状況にもつながっているという。旅行需要の偏りは利用者にも事業者にも好ましくない結果を招いているのだ。

 その上で、観光振興では利用者の経済的、時間的な障害をできる限り取り除き、休日に偏らずに分散して何度も利用させることが重要であると、同レポートは指摘している。

「ずらし旅」とは、まさに旅行業におけるオフピークに着目した取り組みといえるだろう。

 既に通勤の世界では「ずらし勤務」が進行しつつある。これまでの仕事から時間をずらした時差通勤や、場所をずらしたテレワークの推進である。

 満員電車は多くの人の行動様式が似通っているから生じる現象だ。朝起きて夜寝るという人間の性質上、ある程度のピークが生じるのはやむを得ないとしても、出勤時間や勤務場所がもっと多様ならば、200%というような混雑は生まれるはずがない。

 実際、コロナウイルスの感染拡大以降、鉄道の通勤利用者は約3割減少し、オフピークが進みつつある。これまで数十年、政府や鉄道事業者が訴えてきたことが、わずか数カ月で実現してしまったのである。

 通勤利用の減少は鉄道会社にとっては痛手である半面、将来的にピークの小さい輸送を前提とした設備、人員に転換できるのであれば十分にお釣りが来る話でもある。

 同様に、コロナ禍は観光業にとっても大きな変革のタイミングなのかもしれない。