過去数十年にわたり北朝鮮の実権を握ってきた金一族は、自分たちを神格化し、失敗とは無縁の超人的な存在として位置づけてきた。だが、金正恩(キム・ジョンウン)氏はここにきて従来とは異なるアプローチを採り始めた。誤りから決して免れられない「人間」として、自らのイメージを塗りかえようとしている。北朝鮮が新型コロナウイルスの流行、洪水被害、経済制裁などの難題に見舞われる中、正恩氏は謝罪し、失策を認め、被災地を訪問している。国営メディアによると、正恩氏は「真実を隠ぺい」する恐れがあるとして、金一族を「神話化」することを止めるよう当局者に指示した。正恩氏による伝統との決別は先週、改めて鮮明になった。北朝鮮軍が韓国の公務員を殺害した問題を巡り、正恩氏はすぐさま謝罪した。韓国当局者が事件への対応を要求した翌日だった。北朝鮮がここまで率直かつ迅速に罪を償うのは極めて異例だ。