終わらないSNS上での誹謗中傷。言葉の持つ「暴力性」を、日本人はまだ使いこなせていないのではないか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

続くSNSでの誹謗中傷。コロナ禍で閉じこもる生活の中、その過激さはさらに増し、もはや社会問題化しつつある。一方、夫がイタリア人で、1年の半分をイタリアで暮らしてきた世界派の漫画家・ヤマザキマリ氏も、イタリアに戻ることができず、約10カ月、東京の自宅に閉じこもってきた。その生活の中、改めて言葉の持つ「暴力性」を、日本人はいまだに使いこなせていないのでは、と感じているそうだ。自粛生活中における自身の「気づき」をまとめた新著『たちどまって考える』(中公新書ラクレ)を上梓したヤマザキ氏が、思いの丈をつづる。

日本人はなぜSNSで
“タガ”が外れがちなのか

 今現在、過去のパンデミックにはなかったものがいくつか存在しています。たとえばSNSもその1つです。世界の大都市がロックダウンしていた間、自宅隔離されていた人々が作成した動画が、フェイスブックなどを賑わしていました。日本でも、外出を自粛する人たちのコミュニケーションツールとして、SNSは平時にも増して機能していたようです。

 しかしその最中、プロレスラーの木村花さんが自ら命を絶つ事件がありました。緊急事態宣言が解除される数日前のことですが、SNSを通じ、出演していたテレビ番組の内容をもとにした誹謗中傷が起きたのが原因だったと見られています。

 匿名での投稿が可能なSNSは、書き込みに対する責任のタガが簡単に外れやすいものです。特に自粛期間という社会的縛りを強いられる中、人の内面に溜まった不安や欲求不満が爆発し、SNS上に心ない言葉として表現された可能性も大いにあります。

 日本のように世間体の戒律が厳しく、空気を読む必然性が高い国だと、普段思っていることをなかなか言語化できない。お酒の力を借りてやっと本音を言えるような環境にあるからこそ、日本におけるSNSの使い勝手は、普段から言いたいことを言語化できている他の国々とは、どこか違っているように感じられるのです。