人民元にわか人民元高が注目されている。原因は、米大統領選におけるバイデン氏の勝利見通しだけだろうか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

1年6ヵ月ぶりの高値
「政治的に見れば元は買い」

 米国の政治情勢を巡るヘッドラインが騒がしくなっており、金融市場でもこれに右往左往する時間帯が増えてきているように感じる。為替市場でも、注目されやすいG3(ドル、円、ユーロ)通貨の値動きこそ乏しいが、中国の人民元を巡る動き、具体的にはその上昇の勢いが耳目を集めている。

 国慶節明けとなる10月9日には、1ドル=6.69元と1年6ヵ月ぶりの高値をつけたことが話題となった。後述するように、こうした元高は対米関係の改善や中国経済への前向きな評価を反映した動きと考えられるが、そろそろ許容範囲を超えるという当局の思惑も見え隠れし始めている。

 具体的には10月10日、中国人民銀行(PBoC)は、金融機関が為替フォワードを通じた顧客向けの外貨買い(元売り)を行う際に預け入れていた元本20%相当の外貨リスク準備金を、10月12日から撤廃することを表明している。この外貨リスク準備金とは、要するに「元売りを行う金融機関への罰金」であり、2年前、元安の動きが懸念される局面で導入された措置である。それが最近の元高に対抗すべく、撤廃されたのだ。元高を不快に思い始めているのは確かなのだろう。

 巷で指摘されるように、米民主党のバイデン候補は親中派と形容されることが多い。ゆえに、バイデン候補が優勢になるほど米中関係の緊張緩和を期待した元買いが入りやすいと考えられてきた経緯があり、実際、その予想される勝利確率と元相場の動きは連動してきた経緯もある(図表1参照)。

 バイデン候補が副大統領時代の訪中時に、対米輸出規制緩和と引き換えに元高を容認したという過去も引き合いに出されるなど、「政治的に見れば元は買い」との判断が幅を利かせやすい環境がある。

 思い返せばちょうど1年前は、米中貿易摩擦を巡る緊張が極まる中、ドル/人民元が大台となる7.0に乗せ、定着していた。流れが変わった背景に「トランプからバイデンへ」という政治的な読みがあるのは、ある程度確かなのだろう。