トヨタの支配権を取れるほどの
莫大な投資資金から買える銘柄を逆算

さて、バフェットが商社株に続き、買いそうな企業はどこか。その際、まず気を付けなければいけないのは、バークシャーの投資余力は、とてつもなく大きいということだ。現在のバークシャーが持つ現金同等物は1500億ドルに及ぶ。実にトヨタの時価総額の70%の規模だ。

いまある現金でトヨタの支配権を取れるのだ。まさに巨象である。しかし市場で株価にインパクトを与えないで買い付けるには、相当な時間がかかる。総額60億ドルほどの日本の5大商社の株式取得でも、1年かかったのだ。

またある程度の時価総額の企業でないと、投資対象にならないということがある。バフェットがいみじくも言っている。

「バークシャーの資金規模が小さかったときは、投資先企業の規模の制約がなくできたので、いい企業を見つけてきて、1年で50%の利回りでも稼げる自信はあったが、いまは、資金規模が大きく投資先が限定され、そこまでのパフォーマンスを上げることができなくなっている」

これらを踏まえると、一般の投資家が、バフェットが買いそうな銘柄(規模が大きい銘柄ばかりになりがち)を買うことが果たして適切かということになるが、まずは時価総額が、バフェットが買う範疇に入るだろう銘柄の中から紹介しよう。

そして、次に、比較的規模が中小規模で、バフェットが買う部類には入らないが、バフェットが好みそうな銘柄を紹介する。なお、紹介する銘柄が、必ずしも上に述べたバフェットの投資基準をすべて満たすということではなく、一部ということもある。日本株を選定するうえで、コロナ禍の影響で今期業績が下振れし、予想株価収益率(PER)が、かなり上振れて高くなることも留意しておく必要はあるだろう。またこれらの銘柄に投資する際は、短期の値幅取りが目的ではなく、5年、10年持つつもりの長期投資が前提であることは念頭に置いておくべきである。

信越化学、クボタなど厳選バフェット銘柄の5社

まずは信越化学工業(4063)。半導体用シリコンウェハ、塩化ビニルで世界シェア1位。北米住宅需要の拡大が、塩ビ事業に追い風になっている。市況低迷期に積極的に設備投資をするなど、経営に妙がある。財務基盤がしっかりとしていて、営業利益率は26%と高い。長期に持つのに向いているといえよう。次にクボタ。この企業は、あまり知られていないグローバル企業だ。農機、小型建機を強みとして、海外売上高は67%を占める。北米地域が主力市場。バフェットは、同業の米ディアに、数年前投資したことがある。安定的に業績が拡大していて、バフェット好みといえよう。次に村田製作所を上げよう。この会社も、ITに欠かせない電子部品(積層セラミックコンデンサ)で世界シェア40~45%と推定され、信越化学と同じように高い市場シェアを誇る。これからも安定的な成長が続こう。財務基盤も堅い。そしてトヨタ自動車。言わずと知れた日本の時価総額最大の企業である。バフェットは、バークシャーでGMを現在25億ドルほど持っている。GMを持っていて、トヨタを持たない理由はあまりないと思われるが、どうだろうか。環境技術で優位に立っていて、中国での販売は好調である。通常ベースのPERは10倍程度で、割安感はある。そして最後は、現在コロナ禍による乗客減で、苦しい状況が続く東海旅客鉄道を上げた。株価は、昨年高値から43%下落しているが、下げ過ぎの感が強い。こういう時に買うのがバフェット式ともいえる。なおバフェットは、米国有数の鉄道会社BNSFを買収して、バークシャー傘下に収めている。

バフェット研究家の投資のプロが厳選!<br />バフェットが次に買う日本企業5社とは

いかがだろうか。もちろんバフェットが買うには規模が小さいが、バフェットが好みそうな銘柄もある。次回はその厳選銘柄を紹介しよう。

バフェット研究家の投資のプロが厳選!<br />バフェットが次に買う日本企業5社とは

尾藤峰男
公認投資助言者(RIA)、びとうファイナンシャルサービス代表取締役
米国CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員、日本FP協会CFP®認定者、1級FP技能士
1973年埼玉県立熊谷高校卒。1978年早稲田大学法学部卒。日興証券に1999年まで21年在籍。投資アドバイスなど主要証券業務に携わる。英国、カナダ、オーストラリア(現地法人社長)の3カ国に勤務。2000年に当社を開業。金融機関から完全に独立した資産運用アドバイザーとして、個人の金融資産や退職金の運用助言・ライフプランニング・サービスを、商品の販売手数料によらずに、フィー(投資助言料)のみで提供している。グローバルな投資理論や外国株投資、国際分散投資への造詣が深い。著者に「いまこそ始めよう 外国株投資入門」「バフェットの非常識な株主総会」。日本経済新聞等に記事掲載、メディア登場多数。
投資助言・代理業登録(関東財務局)
びとうファイナンシャルサービスWebサイト http://www.bfsc.jp/