調布市,道路陥没事故写真:住民提供

突然、住宅の前の道路が陥没する――。衝撃を禁じ得ない現場の直下では、東京外郭環状道路のトンネル工事が進められていた。同じ工法で大深度地下を掘り進むリニア中央新幹線工事に不安はないのか。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

47メートル下をシールドマシンが通過
因果関係は不明で工事が中断

調布市,道路陥没写真:住民提供

 休日の朝、自宅のガレージのすぐ前を走る道路に亀裂が入り、少しずつ広がって、昼ごろには深さ5メートルの大きな穴になった――。

 そんな“嘘のような本当の話”が起きたのは10月18日、東京都調布市の京王線つつじヶ丘駅から徒歩4~5分ほどの住宅街だ。

 すでに報じられている通り、この現場の約47メートル直下では、千葉県から埼玉県、そして現場のあった調布市などを通って東名高速道路に接続する全長約85キロメートルの東京外郭環状道路(外環道)のトンネル建設工事が進められ、9月中旬にシールドマシンが通過していた。

 ここは外環道を南に向かって東名高速道路に接続するまでのトンネルで、施工主は東日本高速道路(ネクスコ東日本)。工事を請け負ったのは、鹿島建設・前田建設工業・三井住友建設・鉄建建設・西武建設共同企業体(JV)だ。

 ネクスコ東日本は翌19日に、「東京外環トンネル施工等検討委員会」を開いた後の記者会見で、陥没と道路工事の関連の有無や原因が判明するまで工事を中断する、と説明した。再開の時期は未定だ。

 検討委員会の委員長を務める小泉淳・早稲田大学名誉教授は会見で、「断定するのはまだ早い。ただ、(道路工事と陥没の)因果関係はないとは言えないし、(道路が)急に落ちるとは思えない」と述べた上で、陥没の原因として、(1)シールドマシンが土を取り込みすぎたことによる地盤への影響、(2)陥没した地表付近に以前から空間があった――の2つの可能性を挙げた。

 外環道は、都心での渋滞緩和を目指して1966年に都市計画決定した。ところが、住民の反対や用地買収の難航によって計画が遅れ、2007年に当初の高架から地下方式に変更した上で工事が進められた。

 首都高速道路の渋滞の大きな要因が、東京都心を目的地とせずに通過する長距離運転の車両の進入だった。これを外環道や首都圏中央連絡自動車道(圏央道)を経由させることで都心の交通渋滞を緩和するという、交通政策の面から見ると非常に理にかなった計画といえる。