湧水で中断した名古屋の工事は
11カ月ぶりに再開した
2018年12月末から中断していたリニア中央新幹線の名城非常口(名古屋市中区)の掘削工事が、11月26日に約11カ月ぶりに再開した。地下水が沸き出たために工事を中止していたものだ。
現場は名古屋城の南側に隣接していて、この辺りの地層はもともと地下水の水位が高い。着工前に入念な地質調査はしていたものの、一般に地中にトンネルや構造物を造る土木工事では、地下水の状況は「掘ってみないと分からない」(複数のゼネコン関係者)。
この地区の地層は、水を通さない粘性土の層と、水を通す砂礫層がランダムに積み重なる複雑な構造をしている。中でも特に複雑な地層となっている部分に高水圧がかかり、水みちが形成されたとJR東海は分析している。掘削作業を中断している間には、掘削面からの湧水を止めるため、非常口内に水を溜めて地下からの湧水を抑えた上で、止水工事を行った。
当初は16年4月から今年9月末までと予定されていた工期は、中断期間を除いて約7カ月間延び、竣工の予定は21年4月末となった。掘削工事の中断期間を除いても工期が延びたのは、工事開始前の地質調査で、一部から基準値以上の鉛(特定有害物質)が見つかり、それを取り除いていたためだ。鉛はリニア工事以前に発生していたものだった。
幸いなことに、同じように水が出やすい地質と言われているリニア新幹線の名古屋駅新設工事では、水の問題は起きていない。
JR東海は掘削中断や工期延長によるスケジュールの修正について、「全体工期へ影響しないよう進めていく」と説明するが、2027年に品川から名古屋間を開通させる目標はハードルが高そうだ。
「今はほかにも仕事がたくさんあるから困らないし、遅れても追加工事として補償されるだろう」とゼネコン幹部が言うように、掘削の中断期間中に、ゼネコンや専門工事業者の人員や機材は遊ぶことはなかったようだ。
ただ、ここから先の人材や資材のやりくりには難しさが伴うだろう。たとえ名城非常口工事の工期が守れても、遅れのしわ寄せは他の現場に生じかねない。全国でインフラ更新などの土木工事があり、建築でも再開発などが目白押しとなっている建設業界は、職人の高齢化と入職者の減少という慢性的な人手不足に長らく悩まされている。