「こころと身体のよろづ相談」
コーナーを訪れる人々の悩みとは

「こころと身体のよろづ相談」コーナーの奥で来談者を待っている精神科医の熊倉陽介氏は、「ひたすら、医療不信の話をぶつけられるために、私はここにいるのかもしれません」と苦笑する。

「医療現場は、必ずしも治療的ではありません。本当に困っている方は、病院でさらに傷つけられる場合があります」(熊倉医師)

 それでも、医療相談を大切にしているのは、なぜだろうか。世界の医療団「ハウジングファースト東京プロジェクト」コーディネーターの武石晶子さんは、支援を必要としている人々がしばしば「助けて」と声をあげる気力まで失っている事実を指摘しつつ、次のように語る。

「相談者にとって、身体の問題は、『助けて』と言いやすい傾向があります。そこで医療ボランティアが身体の問題の後ろに隠れている生活の困りごとを伺うことがしばしばあります。医療相談をきっかけに生活相談に繋がれば、一時の対処療法ではなく継続した支援が可能になります。困っている方にとって、支援につながるきっかけになりやすいのだと思います」(武石さん)

 武石さんたちスタッフやボランティアは、相談に訪れる人々を待っているだけではない。炊き出しのために並んでいる人々に、積極的に声をかける。マスクや消毒剤などを詰め合わせた衛生キットを配布し、「何かあったら、来てくださいね」と語りかける。顔なじみになった人々は、近況や体調の変化を自ら語ることもある。

 柔らかく、しかし徹底的に、いざというときの相談先について伝える背景の1つは、東京にも冬の訪れが迫っていることである。

「冬に向けて、新型コロナの予防を続けていく必要があるのはもちろんですが、これから寒さで別の感染症も増えていくでしょう」(武石さん)