あなたが在宅勤務中についスマホを触ってしまう意識のメカニズムリモートワーク中、集中できない理由とは? Photo:PIXTA

リモートワーク中なかなか集中できない……とう悩みを抱える人は少なくないでしょう。集中力を保てない原因とは何か。その問題を解決するポイントとは。精神科医でマジシャンという異色の肩書を持つ志村祥瑚氏がその対処法を解説します。

人間は「ミスディレクション」される生き物

 外出自粛や働き方改革でリモートワークが増えているなか、家だとどうしても仕事に集中できないという声をよく聞きます。パソコンを開いてもネットニュースばかり見て、LINEの通知音が鳴るたびにスマホをいじって、休憩してはお菓子をボリボリ食べて……。仕事に集中しようと思っているのに、ついつい別のものに意識が向いてしまう。そんなあなたは、「ミスディレクション」というマジックにかかっているのかもしれません。

 私は精神科医とマジシャンという2つの職業を持っています。医学とマジック、全く異なる職業に思えますが、実は1つの共通点があるのです。それは「ミスディレクション」を扱う職業だということ。ミスディレクションとは「間違った方向に注意をそらされること」を指します。

 本来はマジックで使われるテクニックです。例えば、マジシャンが「見て!象だ!」と言って指をさすと、観客は指先の方向に注意をそらされます。これがミスディレクション。その隙にマジシャンはトリックを隠し、観客をだますのです。

 ミスディレクションは、マジックでは、観客を喜ばす拍手喝采の技ですが、日常生活ではあなたの行動を邪魔する敵にもなります。ミスディレクションが、あなたの生産性を奪っているのです。例えばあなたが仕事に集中しようと思っているのに、LINEの通知が鳴るたびに机の上に置いてあるスマホをいじってしまう。これは、スマホによってあなたの注意がそらされている状態です。気づいたら1〜2時間スマホに時間を費やし「ああ、自分はなんてダメなんだ」と罪悪感にさいなまれているかもしれません。本当は目の前の仕事に集中したいのに、スマホにミスディレクションされた結果、あなたは集中できません。

 スマホだけでなく、ネガティブな思考もミスディレクションのきっかけになり得ます。「自分なんかダメだ」という方向にばかり注意をそらされていると、心の病になってしまうことも。

 私は精神科医として、患者のミスディレクションを解く治療をしています。しかし、患者だけでなくアスリートや経営者など意志が強いと思われている人も、今これを読んでいるあなた自身も、このミスディレクションにだまされていることがあるのです。