17年に「少年ジャンプ」誌上で初めて作品を読み、一気に心を鷲づかみにされたというコラムニストの堀井憲一郎さんが語る。

「切ないんです。人の生死を扱うんですが、その人生についてきちんと描いているから、生き死にがとても切なく感じます。読み始めたのが、ちょうど主要キャラのひとりが死ぬ頃。彼の死のシーンでぐぐっと心をつかまれました。読んでて泣いてしまうんです。泣くのがわかっているから、駅の売店で買ってはいかん、電車の中で読んではダメだと思うんですが、すこしでも早く読みたくて、つい電車で読んでしまって……」

 しかし、堀井さんが読み出した当時は、さほどすごい人気があったわけではないという。

「僕は大学のマンガ研究会と交流があって、20人くらいの学生相手に『鬼滅の刃』って泣けるよねと話したんです。でも反応したのは1人だけ。その子とはものすごく話が弾み、熱く語り合ったんですが、他の連中はそもそも作品をよく知らないようで、反応が悪かった」

 その状況が、19年4月にアニメが放送されたことで一変したという。堀井さんが続ける。

「アニメーターたちの深い愛情を感じました。一つ一つのシーンの描き方がものすごく丁寧で綺麗だし、血が流れたり首が落ちる様子もしっかりリアルに描かれています。アニメのスタッフが『私たちの力で鬼滅を多くの人に認めさせよう』という思いを持って作ったと伝わってきます。原作に余計なものは足さず、わかりにくい部分について補足をしてくれたので、世界観を深めてくれました。マンガの方がこれから最後の戦いで一気に盛り上がっていこうという時期に、アニメの放送が重なったんです。従来のマンガファン、アニメから入ったファン。この相乗効果が出たんだと思います」

 周囲の人の反応も違ってきた。

「僕が買ったばかりの『ジャンプ』を持っていると、マン研の連中が『貸して下さい。「鬼滅」だけ読ませてください』と言ってくるようになったんですよ。そういえば昔、同じようなことがありました。『あしたのジョー』の最後の頃。『少年マガジン』を持って京阪電車に乗っていたら、知らないおじさんが『ジョーがどうなったのか、見せてくれへんか』と声をかけてきたんです。『あしたのジョー』と同じような社会現象になったと思います」