久しぶりに一般人にも届くブームとなった漫画「鬼滅の刃」。第1期アニメが終了してもうすぐ1年がたとうとしているが、その人気はいまだに勢いを失っていない。コミックスの累計発行部数は7月に8000万部を突破し、10月には映画「無限列車編」が公開される。原作コミックスは5月に最終回を迎えているにもかかわらず、同作は多種多様な企業とコラボレーションを繰り返している。アニメを利用したビジネス展開の今を追う。(清談社 武馬怜子)
出版不況を救った
巨大市場「鬼滅の刃」
初夏の夕方、今にも雨が降り出しそうな新宿歌舞伎町を歩いていると、カラオケボックスの入口から大音量で歌手LiSAの曲である『紅蓮華』が流れていた。この曲のリリースは2019年4月。つまり、この1年間ずっと飽きられずに流れ続けていることになる。
この曲は言わずと知れた大ヒットアニメ「鬼滅の刃」の主題歌。同作はさまざまな企業とのタイアップ企画に起用されており、現在でも至る所で同作のキャラクターを見かけるほどの人気を保っている。
この作品は主人公の竈門炭治郎(かまど・たんじろう)が、鬼にされた妹・禰豆子(ねずこ)を人間に戻すため、さまざまな困難を乗り越え成長していく物語だ。いかにも少年漫画らしい分かりやすいストーリー展開もあって、今や老若男女問わず高い人気を博している。放送されるアニメ全てに目を通し、アニメビジネスにも詳しいコメンテーター・小新井涼氏は「鬼滅の刃」の魅力についてこう話す。
「キャラクターもそうですし物語もそうですが、ジャンプ作品には『努力、友情、勝利』、この3本柱をテーマにした作品が非常に多い。『鬼滅の刃』に関してもそれが多面的に描かれているところにその魅力があります」
「水の呼吸、壱ノ型!」など、主人公が叫ぶ必殺技は原作に忠実で、子供も真似しやすい要素だが、アニメは深夜枠で放送されていただけあって、ただ敵を倒すだけではなく、大人向けのグロテスクな描写が盛り込まれるなど、アニメなりの表現の工夫が施されている。