営業活動の成果を、正しく損益計算書に表現する

林教授 たとえば、3月31日が決算日の会社が、その3月31日に商品を顧客に引き渡したとしよう。代金を受け取るのは翌月の4月30日だとする。

カノン じゃあ、4月の売上にすればいいんじゃないですか?

林教授 でも、商品は3月31日に顧客のものになっているんだよ。しかも、その商品の代金を支払うことを請求できる権利(売掛金)を持っている。もしも売上計上のタイミングを代金の入金時点だとすると、売上高は価値の増加とは関係のない次の会計期間に計上されてしまうよね。

カノン そうですね。

林教授 つまり、それだと翌期の売上になってしまう。そんな損益計算書は会社の業績を正しく表しているとはいえないよね。

カノン そうか。損益計算書の期間収益は会社が一定期間で増加した価値の総額だから、商品の売上は代金を入金した翌期の4月30日ではなく、商品が売上債権に変わった今期(3月31日)でなくてはならないんですね。

林教授 その通り。タイミングを重視するんだ。もしも入金日に売上高を計上するとした場合、顧客が売上代金を支払わない限り、いつまで経っても売上高は計上されないことになる。それだと営業活動の成果を損益計算書に表現できないよね。

カノン なるほどわかりました。でも、売上代金を払わないって、すごく悪質ですね。

林教授 世の中には詐欺まがいな会社がないわけではない。だが、取引をするにあたって銀行や調査会社で相手先の信用を調査するから、最初からそのような会社とは取引はしない。代金回収が遅れるのは、商売がうまく回らなくて代金を支払いたくても払えないんだよ。無い袖は振れないからね。

カノン そうなんですね。

林 總(はやし・あつむ)
公認会計士、税理士
明治大学専門職大学院 会計専門職研究科 特任教授
LEC会計大学院 客員教授
1974年中央大学商学部会計学科卒。同年公認会計士二次試験合格。外資系会計事務所、大手監査法人を経て1987年独立。 以後、30年以上にわたり、国内外200社以上の企業に対して、管理会計システムの設計導入コンサルティング等を実施。2006年、LEC会計大学院 教授。2015年明治大学専門職大学院 会計専門職研究科 特任教授に就任。著書に、『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか?』『コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?』『新版わかる! 管理会計』(以上、ダイヤモンド社)、『ドラッカーと会計の話をしよう』(KADOKAWA/中経出版)、『ドラッカーと生産性の話をしよう』(KADOKAWA)、『正しい家計管理』(WAVE出版)などがある。