長内 「信頼」という言葉はデジタル化において本当に大事です。私たちが訪れたスウェーデン、フィンランド、エストニアの北欧3国全てで、デジタル化政策において重要なポイントとして「Trust」という言葉を使っていました。

おさない・さとし/2006年早稲田大学経済学研究科博士課程単位取得退学、大和総研入社(金融資本市場担当)。12~14年内閣府参事官補佐として経済財政白書、月例経済報告書などを担当。14年大和総研に帰任(日本経済担当)、18年より現職(金融資本市場担当)。主な著書に『トランプ政権で日本経済はこうなる』(共著)など。 Photo by T.S.

 マイナンバーカードの話でよく議論になりますが、日本は国民の間に政府への信頼がないとよく指摘されます。また、セキュリティーについても情報漏えいなどに対する不安がある。

 デジタル化を推進していくとなると、政府も民間企業も信頼を担保しないといけません。これは国の大小に関係なく必要なことです。

加藤 山岡さんがお話になった「日本はやさしい」に絡みますが、日本はデジタル化の旗を盛んに振ってはみるものの、アナログな仕事をしている人たちの雇用がどうなるのかという問題を直視せずにきたため、デジタル化が遅れていました。しかし、この問題はデジタル化を進めていく上で避けて通れない。そこで、北欧はどうやって乗り越えたのか、見ていく必要があります。

 北欧では、デジタル時代に適応できない人はリカレント教育(学び直し)を受けて、労働市場における価値を再び高めるようにしています。労働者にとっては大変な努力が必要だと思いますが、大学を卒業してから定年退職まで1社だけに勤め上げる、ということができる時代ではないのでしょう。

 そこの覚悟が違います。北欧諸国は小国であるが故、お互いが他国を侵略し、逆に他国から侵略され、という経験をしているので、歴史的に危機感が強かったのだと思います。

 そういう仕組みができあがっていて労働市場のモビリティー(流動性)が高いので、企業も人材の入れ替えを迅速に進められる。そのため、ビジネスモデルの転換が早くて小回りが利くのです。

 フィンランドでは、かつて世界最大の携帯電話メーカーだったノキアがスマートフォン化の波に乗り遅れて経営危機に陥ったとき、国全体が傾くような大騒ぎだったといいます。しかし、そのときに人員整理されたエンジニアたちはリカレント教育などを経て比較的早期に異業種やスタートアップ企業に転職できたそうです。

 また、多くのノキア出身者が起業家となって新たなビジネスを起こしました。そして、今やフィンランドが世界のデジタルビジネスのハブとなって経済が復活してきているのは勇気付けられます。

 一方、スウェーデンでは国民のほぼ全ての人が利用している個人間送金サービスを手掛けているSwish(スウィッシュ)という企業があるのですが、従業員の勤続年数が短い。われわれが話を聞いた人はみんな1~2年だと言うんです。

 そんな国なので、スウェーデンの人たちに「半沢直樹」を見せたら、ピンとこないでしょう。北欧の人だったら、理不尽な上司がいたらすぐ辞めて別の会社に移るでしょうから(笑)。特に半沢みたいに優秀な人ほどそうです。