コロナ禍の中で、「産後うつ」が増えている。1歳未満の赤ちゃんがいる母親のほぼ4人に1人が「産後うつ」を発症している可能性があり、そのうち3分の2は「自身が危険な状態」にあることを認識できていないという調査報告もある。そこで、「産後うつ」を理解するため、聖マリアンナ医科大学神経精神科特任教授の小野和哉医師に話を聞いた。(医療ジャーナリスト 木原洋美)
コロナ禍で「4人に1人」に急増
3分の2は自身の危機を認識できない
「あの人がなぜ」――2020年9月、人気女優の自殺とみられる死の報道を受け、世間ではさまざまな憶測が流れたが、中でも多かったのが「産後うつ」ではないかという指摘だった。同年1月に第2子を産んだばかりだったからだ。
国立成育医療研究センターが行った調査によると、産後1年未満に死亡した女性の死因で最も多いのが「自殺」(2015~16年)であり、「産後うつ」が原因の一つと考えられている。
さらに10月、筑波大学の松島みどり准教授と助産師が子育て関連のアプリを提供する会社を通じて行った調査では、出産後の母親の「産後うつ」が、新型コロナウイルスの影響で以前の倍以上に増えているおそれがあることもわかった。産婦人科医の団体ではこれまでWHO(世界保健機関)のもとに、出産後1年未満の母親の10%ほどが「産後うつ」を発症するとして注意を呼び掛けてきたのだが、今回の調査では、回答が得られた出産後1年未満の母親2132人のうち、およそ24%もの人に「産後うつ」の可能性がみられたという。