なぜ“いい人”ほど消耗するのか? あなたが静かに削られる「意外な環境」とは?
「本を読むのが速い人の秘密」がわかった!
読書中、私たちは文字を脳内で“音”に変換し、その音で理解しています。ポイントは「音の理解速度」。ここを鍛えれば、読書は一気に変わります。本連載は、耳から脳を鍛え、速読力を高める「速聴トレーニング」をお伝えするものです。脳を鍛えることで、理解力、記憶力、集中力もアップします。そのノウハウをまとめた『耳を鍛えて4倍速読』の刊行を記念し、本記事を配信します。
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なぜ“いい人”ほど消耗するのか?
「いい人」とは、周囲に合わせ続けることで、気づかないうちに自分を削ってしまう人のことです。誰かを責めるよりも、自分が変わろうとする。場の空気を壊さないように気をつかい、できるだけ穏やかに関係を保とうとする。そんなタイプの人です。
今の人間関係に、どこか息苦しさを感じている人は少なくありません。会話自体は楽しいし、表面的にはうまくやれている。でも、その関係性の中に長く身を置くほど、なぜか自己肯定感が下がっていく。雑に扱い合うことが当たり前で、ネガティブな言葉が飛び交い、お互いに敬意を払う空気がない。そんな環境の中で、自分だけは相手を大切にしよう、成長しようと努力しているのに、その姿勢がまったく尊重されない。この違和感は、とても健全な感覚です。
人間関係は「環境」で大きく変わる!
人間関係というのは、個人対個人の問題のように見えて、実は「共同体」としての性質を強く持っています。二人以上の人が集まると、そこには自然と雰囲気が生まれ、その雰囲気が積み重なって文化になり、やがて「それが普通」「それは責められない」という暗黙のルールが出来上がります。雑に扱い合う関係性も、誰かが意地悪だから生まれたのではなく、そうした雰囲気と文化が長い時間をかけて定着した結果です。
共同体には、はっきりした特徴があります。それは、人は基本的に「合わせる」生き物だということです。たとえば、明るく外向的な人が多い集団では、内向的で静かな人が浮きやすくなります。これは性格の優劣ではなく、平均値からのズレの問題です。共同体の中では、平均から外れた存在ほど違和感を持たれやすく、ときに排除の対象になります。いじめが起きる構造も、実はここにあります。
この仕組みを理解すると、「今いる場所を内側から変えよう」とすることが、どれほど難しいかが見えてきます。すでに雰囲気と文化が固まり、ルールとして根付いている共同体の中で、「それはおかしい」「もっと敬意を持とう」と声を上げても、ほとんどの場合は受け入れられません。時間をかけて形成されたものは、個人の意志だけでは変えられないからです。これは学校でも会社でも、友人関係でも同じです。
環境を変えるのは、「逃げ」でも「裏切り」でもない
よく、物語やドラマでは、自分が変わることで周囲も感化され、仲間全員が前向きに変わっていく展開が描かれます。でも現実は、少し違います。実際に起きているのは、同じ共同体の中で全員が変わるのではなく、まず自分が外に出て、新しい環境へ移動し、その姿を見て「それでも一緒にいたい」と思った人だけが、後から追いかけてくる、という構図です。共同体の内側で変化が起きたように見えても、実は人が移動しているだけなのです。
だからこそ、成長したい、温かい人間関係を築きたいと本気で思うなら、環境を変えるという選択は逃げでも裏切りでもありません。むしろ、とても現実的で誠実な判断です。自己肯定感が強く、どんな環境でも揺らがない人であれば別ですが、多くの人にとって、敬意のない空気の中で成長し続けるのは、相当な消耗を伴います。
今の時代、環境を変えるハードルは驚くほど低くなっています。オンラインコミュニティや勉強会、学びを軸にした集まりなど、「成長したい」「前向きに生きたい」という価値観を共有する場は、探せばいくらでもあります。そこでは、誰かが新しい挑戦について語り、それを自然に応援する空気があります。敬意を払うことが特別ではなく、当たり前として存在している世界です。
大切なのは「受け身」でいないこと
ただし、大切なのは受け身でいないことです。今の時代、何もしなければ誰も拾ってはくれません。自分は何に挑戦しているのか、どんなことを大切にしているのかを発信し、人に関わり、問いかけていく。その積み重ねの中で、同じ方向を向いた人と自然につながっていきます。外の世界は、思っている以上に広く、温かい人は確かに存在します。
変化を選ぶと、必ず分岐が起きます。昔の仲間の中には、そのまま留まる人もいれば、別の道を歩む人もいるでしょう。でもそれは、どちらが正しいという話ではありません。ただ、自分がどの方向に進みたいかというだけの話です。全員で手をつないで下がり続ける人生よりも、自分だけでも前に進む人生を選びたいなら、環境を変える勇気は必要です。
無理に縁を切る必要はありません。ただ、自分が進む場所を変える。その結果、ついてきてくれた人がいたなら、その縁を大切にすればいい。人生を変える一番確実な方法は、自分を責め続けることでも、周囲を説得することでもなく、身を置く環境を選び直すことなのです。
(本原稿は『耳を鍛えて4倍速読』の一部抜粋・取材加筆したものです)







