民主党代表選で、野田佳彦首相が7割近いポイントを獲得して圧勝した。対立候補の赤松広隆元農水相、原口一博元総務相、鹿野道彦前農水相は、首相批判票の取り込みを目指したが、小沢一郎元代表など増税反対派が離党した後の党内で支持を広げられなかった。
一方、自民党総裁選では、谷垣禎一自民党総裁が立候補を断念した。谷垣総裁は自民党の支持率を回復させることができず、「選挙の顔としてふさわしくない」とみなされた。また、民主党政権の混乱にもかかわらず衆院解散に追い込む機会を逃し続け、「政局眼」にも疑問符が付いた。
特に、衆院の早期解散を焦って、消費増税を否定する中小政党が提出した首相の問責決議案に同調したことに、森喜朗元首相、古賀誠宏池会会長らベテラン議員が猛反発し、谷垣総裁不支持を決断した。結果として、町村信孝元官房長官、石原伸晃幹事長、石破茂前政調会長、安倍晋三元首相、林芳正政調会長代理の5人が立候補する乱戦となった。
国民の関心は、新総裁が民主・自民・公明の「三党合意」を順守するのか、勢いを強める橋下徹大阪市長率いる「日本維新の会」との連携に進むのかに集まっている。既に、谷垣総裁は、「過去の人」となってしまったようだ。
だが、谷垣総裁は、国民に不人気で、18年間も懸案であり続けた「消費増税」を、衆参両院の約8割のコンセンサスを形成して実現した立役者の1人である。これは、政治的な意思決定としては稀有な成功例であり、国際的にも高く評価されているのだ。
「選挙の顔にならない」「倒閣できなかった」「政局眼がない」だけでは、谷垣総裁を正当に評価できないのではないか。今回は、自民党総裁選と距離を置き、「政治家・谷垣禎一」の再評価を試みたい。