谷垣氏、細野氏ともに
首相になれるチャンスはあった?

 与党である民主党、最大野党の自民党が、今月、相次いで新しい党首を決める。報道では、野党である自民党の総裁選の方が、圧倒的に盛り上がっている。次の総選挙での民主党大敗と、自民党の相対的な浮上を見越して、実質的に「次の首相」を決める戦いと見られているからだろう。

 両党の党首選を巡る熱気は残暑のごとくもうしばらく続くのだろうが、一時は両党の党首候補に擬せられたものの、党首選への立候補を降りることを決断した人で注目してみたい人物が2人いる。

 年齢順に挙げると、自民党の谷垣禎一総裁と、民主党の細野豪志原発問題担当相だ。彼らの意志決定について、ビジネスパーソンの処世のあり方とも絡めて考えてみたい。

 以下、谷垣、細野両氏に対して「さん付け」で書く。共に、現時点では首相を目指す政治家ではないので、厳しく批判する必要はないと思う。本稿では、政治家を職業とする1人のビジネスパーソンの行動として彼らを見る。

 現在の自民党総裁である谷垣さんは、能力や人物の点で、現在の国会議員の中では、優れている方に属する人なのではないかと推察する。

 学歴や資格で人を正確に論じることはできないが、若い頃に苦労をされて、かつての司法試験に合格し、弁護士から政治家に転じた経歴や、財務大臣を無難に務めた実績を考えると、谷垣さんはたとえば石原伸晃自民党幹事長よりも自分の方が首相に適任だと思っていただろう。この点について、筆者は反対しない。

 しかし、彼はいかにも人が良すぎたし、勝負のタイミングを見分ける目、あるいは勝負をかける度胸が欠けていた。