「好き嫌いが少ない子」の親がしている1つのコツPhoto: Adobe Stock

新型コロナウィルスの影響で、世の中が大きく変わりつつある。そんな変化の激しい現代において「子どもに何をしてあげられるか」と悩んでいる親は多いのではないだろうか。
そこで、これまで教育を軸に取材を重ねてきた著者が、教育学、心理学、脳科学等、さまざまな切り口の資料や取材を元に「いま、最も子どものためになる」ことを『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』にまとめた。
「家での勉強のしかた」から「遊び」「習い事」「運動」「食事」まで、子育てのあらゆるテーマをカバー。100の「してあげたいこと」を実践するにあたっては、さらに詳細な「421の具体策」で、実際に何をどうしてあげればいいのかまで丁寧に落とし込んでいる。
発売早々、高濱正伸氏(花まる学習会代表)が「画期的な1冊が誕生した。長年の取材で得た情報を、親としての『これは使えるな』という実感でふるいにかけ、学術研究の裏付けやデータなども確認した上でまとめあげた力作である」と評するなど話題騒然の1冊だ。本稿では、特別に本書から一部を抜粋・編集して紹介する。

子どもにとって苦いものは「危険な異物」

 味覚に関する研究の世界的権威である理学博士のジャック・ピュイゼは、「誰一人として同じ味に対する同じ反応はない」といっています。

 4、5歳から7歳(長い場合は9歳くらい)まで、子どもは新しい食べ物を危険なものととらえます。とくに、苦味や酸味については、「腐った異物」だとして、本能的に受けつけません。

 たとえば、小学生が嫌いな食べ物の上位を占めるゴーヤ、セロリ、ピーマンなどは、大人にとっては香りや食感を楽しめる食材ですが、多くの子どもにとっては危険な異物として受けとめられます

 食べ物の好き嫌いは生まれもった本能的な反応であり、子どものときほど敏感で個人差が大きいのは自然なことです。子どもの「好き嫌い」をなくすにはどうすればよいでしょう?

1つのコツ:「無理強い」はしないがあきらめない

 好き嫌いのような本能的な反応には無理に逆らおうとせず、見ただけで嫌がるようなら強制する必要はありません。とくに苦味に対する味覚が育つのはかなり遅いので、子どもが苦い食べ物を嫌うのは自然な反応です。

 ただし、だからといって食べさせるのをやめるのではなく、2~3日あけてから、少し味や調理の仕方を変えてもう一度試します。子どもの味覚を育むには、新しい食べ物に親しむことが重要だからです。

 ただし、毎回、無理に食べさせようとはせず、食べなくても気にしないで、淡々とくりかえします

 生理学的に味覚が変わり始める10歳あたりになると、コショウや塩、野菜も好むようになってきます。苦味の強い野菜には甘めの味付けをするなどの工夫で、少しずつ味覚の幅を広げていきます。

味の刺激で「脳の発達」をうながす

 食べ物の味は、舌の表面にある味蕾(みらい)という器官でキャッチされ、神経細胞を通して脳に伝えられます。味蕾は8歳から急速に増え、12歳をピークに減っていってしまいます。

 味蕾が味をキャッチするたびに送られる信号は脳を刺激し、脳の発達をうながします。脳の発達は、小脳が8歳ごろ、大脳は12歳ごろで完成するといわれています。いろいろな味を経験することで脳が刺激を受けると、「視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚」の五感が研ぎすまされていきます。

 食べることは、たんなる生存のためだけでなく、脳の発達にもつながっているのです。

 ジャック・ピュイゼは「刺激が乏しくてつまらない食べものは言葉を眠らせ、言語を衰退させる」といっています。また、12歳までに基本の味をきちんと体験していない子どもは、成長してから問題行動を起こしやすいという研究結果もあります。

 とくに味蕾がキャッチできるのは、食材そのものの自然の味です。自然の味から基本の「甘味・塩味・酸味・苦味・うま味」の5つの味を見分けるごとに味蕾の数が増え、味覚が鍛えられていきます。

大人がおいしく食べるのを見せる

 栄養のことだけでいうと、嫌いな特定の食べ物を食べなくてもほかの食べ物で代替できるので、好きなものだけでお腹を満たしていても、子どもは十分に育ちます

 とはいえ、味覚は脳の発達にもつながっているので、その意味では子どもがさまざまな味を経験するのは大切なことです。

 大人ができるだけいろいろな食材に挑戦し、おいしそうに食べているところを見せると、子どもも新しい食べ物に興味を覚え、チャレンジしてみようという意欲がわきます

 家庭では、親が好きでないものは食卓に上りにくい傾向にありますが、子どもに機会を与えるために、大人もさまざまな味に挑戦します。

好き嫌いを克服するための工夫

・みじん切りにして、ハンバーグやカレーなどに入れてしまう
・子どもの好きなキャラクターのぬいぐるみや人形を使って応援する
・ゆでて苦味を減らす
・苦味や酸味のある食べ物には、甘味や塩味をつける(ホウレンソウにゴマだれ、マーマレードにハチミツ、ゆで卵に塩など)
※管理栄養士・牧野直子氏によるアドバイス。

取材協力・参考文献
有限会社スタジオ食代表/管理栄養士、牧野直子氏
ジャック・ピュイゼ『子どもの味覚を育てる 親子で学ぶ「ピュイゼ理論」』(石井克枝、田尻泉日本版監修、鳥取絹子訳、CCC メディアハウス)